自己株式の取得、保有、処理についてまとめてみましょう。
1.自己株式の取得
会社法において会社が自己株式を取得できる場合が列挙されています。
(1)自己株式が取得できる場合(会社法155条各号)
(a) 取得条項付き株式について、一定の取得事由が生じた場合
(b) 譲渡制限株式について、譲渡承認をせずに会社が買い取る場合
(c) 自己株式を有償取得する株主総会等の決議があった場合
(d) 取得請求権付き株式の株主が取得請求権を行使した場合
(e) 株主総会の決議により全部取得条項付き種類株式を取得する場合
(f) 相続人等に対する譲渡制限株式の売渡し請求に関する定款の定めがある場合に、会社が売り渡し請求をした場合
(g) 単元未満株主からの買い取り請求があった場合
(h) 所在不明株主の株式を買い取る場合(競売)
(i) 合併などの株式交付の際に生じた1株未満の端株を会社が買い取る場合
(j) 他の会社の事業全部譲受の場合において、当該他の会社が有する会社の株式を主とする場合
(k) 合併後消滅する会社から、会社の株式を承継する場合
(l) 吸収分割する会社から、会社の株式を承継する場合
(m) その他法務省令で定める場合
※自己株式取得に際して(a)~(f)、(h)(i)は財源規制があります。
(2) 自己株式を有償取得する手続
会社が任意に自己株式を有償取得する手続きについては、3つの方法を規定している。なお、金銭以外のものを対価として定めることができます。
全株主から申し込みを募る場合 | 全株主に通知(公開会社は公告可)し、取得申し込みを募る(会社法158) 株主総会の普通決議により取締役会設置会社であれば取締役会に具体的取得の決議を授権する。なお取得期間は1年を超えて定めることはできない(会社法156、157)。 |
特定の株主から取得する場合 | 株主総会の特別決議(会社法160①)。当該株主に議決権はない。 売主追加請求権あり(会社法160②③) 子会社からの自己株式取得は取締役会決議(会社法163) |
市場取引又は公開買付による取得 | 株主総会の普通決議(会社法165) 定款授権による取締役会の決議(会社法165②) |
2.自己株式の保有
消却や処分義務が課されないため、期限の制限なく保有することができます。なお。保有する自己株式は貸借対照表上、資産として計上できず純資産の株主資本に控除項目として区分する必要があります(計規108②五)。
3.自己株式の処分
自己株式を処分する場合は、募集株式の発行等(会社法199~209)に該当し、新株発行と同様の手続きとなります。
4.自己株式の消却
自己株式を消却するには、取締役会により償却する自己株式の数(種類株式発行会社は、種類及び種類ごとの数)を決議することを要します(会社法178)。
5.代用自己株式
株式交換。株式移転、会社分割及び合併の各場面において、募集株式の発行に変え、保有自己株式を交付することが可能です。