指名委員会設置会社の問題点とは

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指名委員会設置会社の特色は、取締役をだれにするかという重要な人事が社外取締役によって決定されるということでしょう。2018年末では上場会社の70社程度しか導入されておらず、以上のことが上場企業で指名委員会等設置会社の導入が進まない理由の一つになっています。要するに社長は「自分の会社なのに、自分で役員報酬を決められないなんてやってられるか!」になりますよね。

指名委員会や報酬委員会の委員も善管注意義務を負っており、社長をはじめとする取締役の人選、インセンティブのような会社の最重要事項を委員の勝手な判断で行っていいわけではありません。導入企業では、社内のスタッフも選定を手助けした取締役候補のリストや他の取締役などから慎重に選んでいると思われます。ベンチャー企業では、社長さんがその人しか適任者がいないことは確かですし、社長を支持する人の持ち株比率が5割強いれば、その立場を追われることはありません。

一見、指名委員会等設置会社は手続きにコストがかかって大変そうに思われてしまいます。しかし必ずしもそういうことはなく、例えば監査役会設置会社では取締役3名と間sな約3名の合計6名が最低必要になってきます。しかし指名委員会等設置会社であれば、3つの委員会を全部同じメンバーが兼務することで、最低3人(そのうち社外取締役が2名以上)で作ることが可能です。但し、ここで注意が必要なのは、上場を目指す会社であれば、ガバナンスの問題もありますから、牽制機能の効きづらい上記の形では審査に通らない可能性があります。つまり取締役とは別に監査専門の担当者を置かなければならないでしょう。

もう一つ、指名委員会等設置会社は会計監査人を置く必要があり、2~3年後に株式公開を目指す企業でない、公開を予定しない子会社等では、この制度がコスト増の要因になることはあり得ます。

さて、2003年4月に施行され、さらに2006年5月施行の会社法によって、委員会設置会社となりましたが、そのときに委員会設置会社制度には以下のような問題点が指摘されていました。

  • 士気の低下

従来的な人事制度では、大手企業の場合、最終的には取締役、社長などへ昇格することがひとつの目標としている場合が多く、社外の者が取締役になることで、社内の士気の低下等が考えられます。

  • 人材の確保

委員会設置会社においては最低2名の社外取締役が必要となりますが、アメリカと比べて経営者の労働市場が流動的でない日本において経営を監督できる資質をもった社外取締役を確保できるのかが問題になります。

  • 監査体制の不徹底

業務執行と意思決定が執行役に集中するうえ、執行役と取締役の兼任が認められているため、業務執行を監視する委員の選定を行う取締役会は、執行役が多数を占めることができます。そのため、日本の委員会設置会社の制度は業務の執行と監督が分離しているか疑わしく、適正な監督が望めないのではないかとの批判がありました。

  • 社外取締役の実効性

権限が集中する執行役に対する監督を行う委員会のメンバーの過半数を社外取締役とすることが監督体制のポイントとなっていますが、社外取締役は常勤しませんし、親会社・取引先の関係者等執行役からの独立性が疑われる者もその資格を満たすため、社外取締役による監視機能の実効性には疑問があると考えられています。

以上の問題点を改正するために、2015年5月に旧来の「委員会設置会社」は「指名委員会等設置会社」となり、さらに「監査等委員会設置会社」が新たに設けられたという経緯があります。

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