日本とアメリカのコーポレート・ガバナンスにおける議決権や環境についての違い

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実は、決議に必要な議決権の割合も日米で異なることがあります。例えば、アメリカでは、合併でも総議決権の2分の1超の賛成で決議できますが、日本では出席株主の議決権の3分の2以上の賛成(特別決議)が必要になります。アメリカより日本の方が少数株主についての権利も実は強かったりします。

このような状況を考えますと、アメリカよりも日本の方が資本政策を慎重に考えていかなければなりません。つまり株式を慎重に発行していかないと、経営陣が経営の主導権を握れなくなってくる可能性もあります。特に少数株主権が強く、株主総会にかけなければならない事項が多いため、多数の株主から資金調達を行うことは、あまり望ましいことではありません。

ここで少数株主権をリスト化してみましょう。

保有要件 行使できる株主の権利 権利の内容
総議決権の1/10以上 募集株式発行における株主総会請求権(公開会社) 支配株主が変わることになる募集株式を発行するときに、株主総会での決議を要求することができる。
総議決権の1/10以上 募集新株予約権発行における株主総会請求権 (公開会社) 募集新株予約権に係る対象株式が交付されたときに、支配株主が変わることになる募集新株予約権を発行するときに、株主総会での決議を要求することができる。
総議決権の3/100以上 株主総会招集請求権 株主総会の招集を請求することができる。
総議決権の1/100以上または300個以上の議決権 株主提案権 (取締役会設置会社) 一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。
総議決権の1/100以上または300個以上の議決権 議案通知請求権 (取締役会設置会社) 株主が提出しようとする議案の要領を株主に通知することを請求することができる。
総議決権の1/100以上 株主総会の検査役選任請求権 株主総会の手続を調査させるため、検査役の選任の申立てをすることができる。
総議決権または発行済株式の3/100以上 業務執行に関する検査役の選任請求権 業務の執行について不正が疑われるときに、その調査のため、検査役の選任の申立てをすることができる。
総議決権の3/100以上 役員等の責任軽減への異議申立権 取締役会の決議によって役員の責任免除をするときに、それを阻止することができる。
総議決権または発行済株式の3/100以上 会計帳簿閲覧請求権 会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写を請求することができる。                                
定足数のときに特別決議を否決することのできる議決権以上 簡易合併等に対する反対権 簡易合併等の際に反対することにより株主総会決議を省略できなくすることができる。
議決権または発行済株式の1/10以上 解散請求権 やむを得ない事由があるときは、訴えをもって株式会社の解散を請求することができる。
最終完全親会社等の総議決権または発行済株式の100分の1以上 多重代表訴訟提起権 当該会社(子会社)特定責任に係る責任追及等の訴えの提起を請求することができる。
総議決権または発行済株式の3/100以上 役員解任請求権 一定の要件の下、当該役員解任の訴えを裁判所に提起できる。

日本とアメリカではベンチャー企業の環境が大いに異なるため、シリコンバレーの方式を日本でも導入することが正しいとは言い切れません。アメリカのベンチャー実務に親しんでいる人からしますと、投資家と企業で相対で決められる投資契約に拒否権がつき、出資比率の低い株主まで拒否権を単独行使できるのは、非常に違和感があります。とはいえ、アメリカでは合併も株主の過半数の決議で決議できますし、対する日本は3分の2以上の株主の同意が必要であり、少数株主権が強力なことと相まって、過半数の優先株を持っている投資家が全てを決められることに、抵抗感があります。また、アメリカほど株主数を増やしにくい状況にあり、ベンチャーキャピタルが数社しかいなくて、同じような持株比率であれば、株主間契約にしても何にしても結果はあまり変わらないことになるでしょう。

上記は日本側の事情です。アメリカでは事前のルール決めをしておかなければ、株主間の調整が上手く取れません。おそらく日本でも株主間契約を活用する方向に進んでいくものと思われます。

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