株式保有特定会社と土地保有特例会社の株価評価の仕方を見ていきましょう。ここでも国税庁方式を取り上げます。
1.株式保有特定会社の株式評価
評価する株式の発行会社の資産内容が著しく株式等に偏っていると認められる場合、一般の評価会社に適用される類似業種比準方式を適用しても適正な株価の算定は難しいものと考えられています。そこでこのような会社を株式保有特定会社とし、その株式の評価は原則、純資産価額方式により評価することとなっているのです。但し、納税者の選択によって、評価の特例「S1+S2」の方式によることができます。なお、「株式保有特定会社」とは、課税時期における評価会社の総資産に占める株式等の保有割合が大会社の場合25%以上、中・小会社の場合50%以上である会社を言います。
(a) 評価の特例「S1+S2」方式
株式保有特定会社の株式の価額=S1+S2
S1:株式保有特定会社が所有する株式等とその株式等に係る受取配当収入がなかったとした場合のその株式の保有特例会社の株式の額を会社の規模に応じた原則的評価方式によって評価した額
S2:株式保有特定会社が所有する株式等のみを評価会社の資産として捉え、1株当たりの純資産額によって評価した額
(i) S1の金額の計算
<原則的評価方式が類似業種比準価額である場合>
S1=A×((B’-b)/B+(C’-c)×3/C+(D’-d)/D)/5×0.7
A:類似業種の株価
B:課税時期の属する年分の類似業種の1株当たりの配当金額
C:課税時期の属する年分の類似業種の1株当たりの年利益金額
D:課税時期の属する年分の類似業種の1株当たりの純資産価額
B’:評価会社の直前期末における1株当たりの配当金額
C’:評価会社の直前期末における1株当たりの年利益金額
D’:評価会社の直前期末における1株当たりの純資産価額
b:B’×受取配当金収受割合
c:C‘×受取配当金収受割合
d:X+Y(D’を限度とする)
X:D’×評価会社の所有する株式等の価額(帳簿価額)/評価会社の総資産価額(帳簿価額)
Y:評価会社の1株当たりの利益積立金額×受取配当金収受割合
受取配当金収受割合=直前期末以前2年間の受取配当金額の合計額/(直前期末以前2年間の受取配当金額の合計額+直前期末以前2年間の営業利益の金額の合計額)
※1 受取配当金収受割合は1を限度とする。
※2 営業利益は会社法計算規則第121条に定める営業利益を言い、評価会社の事業目的によって受取配当金が営業利益に含まれているような場合には、受取配当金額を営業利益金額から控除する。
<原則的評価会社が純資産価額の場合>
S1=(各資産(株式等を除く)の相続税評価額―各負債の金額―評価差額の42%相当額)/課税時期における発行済株式数
(ii) S2の金額の計算
S2=(株式等の価額の合計額―(株式等の価額の合計額(相続税評価額)-株式等の価額の合計額(帳簿価額))×42%)/課税時期における発行済株式数
2.土地保有特定会社の株式評価
評価しようとする株式の発行会社の資産内容が著しく土地株式等に偏っていると認められる場合、一般の評価会社に適用される類似業種比準方式を適用しても適正な株価の算定は難しいものと考えられています。そこで、このような会社を土地保有特定会社として、その株式の評価においてはその資産価値をよく反映し得る純資産価額方式により評価することになっているのです。土地保有特定会社とは課税時期における評価会社の総資産に占める土地等の保有割合が以下の基準に該当する会社を言います。
会社の規模 |
大会社 |
中会社 |
小会社① |
小会社①に該当しない会社 |
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業種 |
― |
― |
卸売業 |
卸売業以外 |
卸売業 |
小売・サービス業 |
その他 |
総資産額 |
― |
― |
20億円以上 |
10億円以上 |
|
|
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総資産に占める土地等の保有割合 |
70%以上 |
90%以上 |
70%以上 |
90%以上 |
(出所:国税庁HP)