監査役等委員会設置会社における制度設計とは

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2014年の国会で成立した改正会社法で「監査等委員会設置会社」が誕生しました。これは指名委員会等設置会社の3つの委員会のうち、監査委員会だけのバージョンになります。

指名委員会等設置会社で抵抗感のあった、社外取締役に取締役の人事を左右されるというところが緩和されています。ここで「等」となっているのは、監査等委員会が監査だけではなく、取締役の選任・解任や報酬等人事に関しても、株主総会等で意見を述べることができることになっている等、監査以外のことにも若干関わっていることによります。

指名委員会等設置会社の場合には、株主が選任するのは取締役だけで、各委員会の委員をだれにするかについては、取締役会が決定します。監査等委員会設置会社の監査等委員の人選や報酬は、株主総会で他の取締役と区別して決定することになります。また、指名委員会等設置会社と異なり、執行役という機関はありません。指名委員会等設置会社の代表者は代表実行役でしたが、監査等委員会設置会社の代表者は代表取締役となります。この方が日本ではより受け入れられやすいと思います。そして実際、上場企業における同制度の採用数は平成28年6月の段階で上場企業の2割に達しているとのことです。

監査役会設置会社と対比した場合、監査等委員会設置会社には以下の利点があげられます。

(a) 監査役の任期が4年であるのに対し、監査等委員である取締役の任期は2年であるため、より柔軟な改選が可能。
(b) 従来取締役会で議決権を行使できなかった社外役員(社外監査役)が、取締役会で議決権を行使できるようになり、ガバナンス強化に資する。
(c) 業務執行に関する迅速な意思決定ができるようになる。
(d) 従来の社外監査役を横滑りで監査等委員の社外取締役とすることは禁じられていないため、これにより成立要件を簡単に満たすことができる。
(e) コーポレートガバナンス・コードの要求を満たすにあたり、社外役員数が2名少なくて済む。
(f) 株主総会における「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明が不要になる。

一方、以下の欠点も上げられています

(a) 社外取締役の確保が困難な可能性がある。社外取締役は社外監査役よりも求められる責任が重く、社外監査役が横滑り就任を承服しない可能性がある。
(b) 社外監査役には従来、監査に特化した専門知識を有する者が就くことが期待されており、弁護士や公認会計士などが選ばれるケースも多かった。社外取締役には必ずしも監査に関する専門知識だけが要求されるわけではなく、こうした高度な資格を有する者が選ばれにくくなる。

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