平均株価の算出

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市場株価法で平均株価を算定する場合、短期的な変動を除外しなければなりません。その一定期間の平均株価を参照する場合、その期間の長短が問題となります。参照期間が短ければ異常な要因の影響で株価がゆがめられ、逆に長い場合には評価基準日と異なる情報に基づいて形成された市場株価が反映されることになり、こちらも株価をゆがめることになります。従いまして、平均株価の算出期間は、短期的な変動を除外し、株価に織り込まれる情報の均一性を確保するために総合的に判断すべきということになります。

実務的には算出期間の客観性や統一性を重視する考え方と、評価対象企業固有の事情を重視して算出期間を決定する考え方に大別されます。とはいえ、ある期間について算出された平均株価が他の期間について算出された平均株価と比較して優れていると言い切れるかどうかの判断は難しいのです。そのために、複数の期間の平均株価を求め、評価基準日の株価を含めてレンジを持った形で市場株価をとらえるのが一般的です。

(a) 客観性や統一性を重視
結局のところ、客観性や統一性の観点からは一定の月数や日数で平均株価の算定を行わざるを得ないということになります。

1か月平均:企業会計基準第10号の「金融商品に関する会計基準」によりますと、その他有価証券の期末時価の算定について、継続適用を条件として期末前1か月の市場株価の平均に基づいて算定された価額を採用することができるものとしています。

3か月平均:我が国の上場企業は四半期決算制度が義務付けられているために3か月ごとに決算情報が開示されます。つまり3か月という期間は上場企業から同一の決算情報等が提供される期間の上限を示しているといえます。そのため、3か月を1つの単位として、当該期間における平均株価を参照することには一定の意味があると思われます。

半年平均:旧レックスホールディングスの株式買い取り価格決定申し立て事件における東京高裁の決定(平成20年9月12日)では評価基準日以前6か月の平均株価を基準に買い取り価格が決定されています。さらに「第三者割当増資等にかかる払込金額は、当該第三者割当増資等にかかる取締役会決議の直前日の価額に0.9を乗じた以上の額を原則とし、但し、直前日までの価額又は売買の状況等を勘案し、当該決議の日から払込金額を決定するために適当な期間(最長6か月)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の額とすることができる旨が認められている」と言っており、最長の6か月間を採用しています。

(b) 評価対象企業固有の事情を重視
決算発表や、業績予想の修正、M&A等株価に重要な影響を与えると思われる事実が興行された日を基準として、同日以降評価基準日までの期間を平均株価として設定する場合もあります。但し何が株価に影響を与えると思われる重要事実に当たるかについては客観的な基準はなく、個々の事情によると思われます。

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