無形資産におけるインカム・アプローチの評価は、対象となる事業から得られるキャッシュ・フロー総額から、評価対象無形資産に帰属するキャッシュ・フローを見積もることで行われます。見積もり方法の違いで、インカム・アプローチによる評価方法は以下の2つの評価方法に分類されます。
(1) 利益差分法
評価対象無形資産を使用しない場合のキャッシュ・フローと使用した場合のキャッシュ・フローとの差額を用いて、評価対象無形資産に帰属するキャッシュ・フローを見積もる方法です。
(2) 事業利益分割法
評価対象無形資産が使用される事業全体のキャッシュ・フローから評価対象無形資産が寄与する額を分離して評価する方法です。これには次の二つにさらに分割することができます。
(a) 利益分割法
評価対象無形資産が使用される事業全体のキャッシュ・フローのうち、評価対象無形資産が寄与する割合を見積もることで評価する方法です。この方法による寄与割合は、対象事業に使用される評価対象資産及び他の資産の貢献度等一定の基準で決定します。
参考程度にしておきますが、利益三分法という考え方があって、企業の利潤は技術、資本、経営の3要素の結合によって生み出され、これらの要素の貢献度によって配分されるべき、との判決がありました(東京地裁昭和37年5月7日判決「鉄筋コンクリート構築物の構築法事件」)。これは非常にシンプルで感覚的な判断に基づいたものと言えます。
(b) 超過収益法
評価対象無形資産が使用される事業全体のキャッシュ・フローの額から、他の資産に要求される期待利益を控除して評価する方法です。
評価対象無形資産が寄与するキャッシュ・フロー
=事業全体のキャッシュ・フロー
-運転資本×運転資本に対する期待利益率
-有形資産×有形資産に対する期待利益率
-評価対象以外の無形資産×期待利益率
上記式で控除している評価対象以外の資産の期待利益をキャピタル・チャージと言います。各資産の期待利益率の水準は、一般的に運転資本<有形資産<無形資産となります。
このとき、運転資本は、回転期間に対応する期間の短期国債利回り、有形資産については、耐用年数の残余期間に対応する長期借入金のレートを採用することがあります。しかしこの方法で評価する無形資産が複数ある場合には、それぞれの内訳が分解できないという限界があります。