さて、WACCを算出する上で、実効税率はググればわかりますし、負債資本コストというのは、簡便法として借入利率や社債の利率を充てることになります。そうなると株主資本コストをどう求めるのか、というところになります。
株主資本コストとは株主が期待する投資リターンのことです。少しややこしいですが、ROEというと、純利益を自己資本で割ったものね、という自己資本利益率を想像する方も多いと思います。これはいわゆる会計上のROEというもので、ここで取り扱うのはファイナンス(財務)上のROEでなければなりません。数式にすると次のようになります。
会計上のROE:ROE=当期純利益÷株主資本(簿価)
財務上のROE:ROE=(キャピタルゲイン+インカムゲイン)÷投資額
財務上のROEの求め方は、数式がありまして、次のようになります。
Re:株主資本コスト
Rf1:現在のリスクフリー・レート
β:リスク感応度
Rm-Rf1:市場リスクプレミアム(市場ポートフォリオの収益率からリスクフリー・レートを引いたもの)
上記のモデルは資本資産評価モデル(CAPM:Capital Asset Pricing Model)でキャップエムと言います。上記式を簡単に申しますと、株主資本コストは、リスクフリー・レートに市場ポートフォリオの収益率からリスクフリー・レートを引いたもの、つまり市場リスクプレミアムに個別株の感応度をかけて導き出したものです。理論的になぜこうなるのかというのはそれだけで一冊の本が書けるくらいですから、ここでは省略しますけれども、ここに出てくるファクターは全て市場からピックアップしています。理屈としては投資家がその企業に期待する投資収益率の平均したものと言えます。リスクフリー・レートとは、国債利回りを当てますが、国債は基本的にほぼ絶対的に投資しても返ってくるものと考えます(新興国ではわかりませんが)。そのためリスクフリーなレートです。企業の株は投資しても返ってこない可能性がありますから、算式の右辺の右側は国債よりもどれだけリスクが高いかを表しています。
β(ベータ)は、TOPIXや日経平均とその個別株の関連度です。日経平均が10%上がったときに、個別株の株価が10%同じように上がったらβは1です。日経平均が10%上がったときに、個別株の株価が5%しか上がらなかったらβは0.5と考えます。市場ポートフォリオの収益率とは、TOPIXや日経平均の収益率のことです。
個別に計算が必要なものはありますが、全てYahoo!ファイナンスのデータから算出することが可能です。