上場まで行使できない条項

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ストックオプションを付与した未上場ベンチャーの従業員等は、上場を待たずに転職してしまうこともあります。危なっかしいし、今後どうなるかもわからないし、ハードな割に報われない可能性も高く、経営者が胸糞悪いし、他にやりたいことが見つかるかもしれませんので、それは当然です。

スタッフを惹きつけておけないアンタが悪いといってしまえばそれっきりですが、ストックオプションに2年後に行使できますというシンプルな制限しかつけておかないと、退職可能なわけです。その点、アメリカでは、ストックオプションは「働いた期間に対応してもらえる権利」という感覚が浸透しており、一定の期間働けば、未公開でもその期間に応じた分、ストックオプションを行使して株式を取得できることになっているケースが多くなっています。この方がフェアですね。これに対して、日本のストックオプションは、上場に向けて努力するためのインセンティブや、上場した際のボーナスのような感覚が強くなっています。経営者も付与してやった感が強いのでしょう。日本のあるベンチャー企業では、従業員であれば退職、外注先であれば無関係になったら、そのストックオプションを返納しろ、というケースもあります。特に後者、支払が悪くなったので、お支払いいただけないのであれば、今後契約を打ち切りますといったら、「じゃあストックオプションを返納してもらって契約を打ち切ります」ときたものです。持っていても仕方ないから経営者の言われるとおりにしてあげました。その会社はもはや倒産してなくなりましたが。

日本でストックオプションを上場前にOKとして譲渡制限をかけないと、変な輩が入ってくる可能性があります。日本ではベンチャー企業の資金調達はアメリカのようにスムーズではないために、中には出してしまってはいけない人から出してもらうケースが少なくありません。いつの間にかに反社会的勢力と仲良くなってしまうベンチャー経営者もいらっしゃいます。一度反社会的勢力と絡んでしまって、株主にでも入ろうものなら、もはや上場審査で引っかかって、上場ができなくなります。

あるベンチャー企業の潜在株主(ストックオプション)で、反社会的勢力からお金を借りてしまって、そのストックオプションを担保にしてしまったからさあ大変。通常は譲渡禁止になっているのですが、あちらの世界の住人は契約書なんて通用しません。「反社会的勢力が絡んでいるとあんたら上場できないんだよなあ」と脅されて、仕方なくその契約書がその反社会的勢力にお金を渡して、全てはないことにしてもらったというケースもありました。当然、その潜在株主とも縁を切りましたが。

ストックオプションを上場前に行使可能にしておくと、行使して顕在株主になって、その株主の多さでベンチャーの総務担当は大わらわになります。ベンチャー企業にとっては機動的に臨時株主総会を開かなければならないケースもあります。そのときに会社を辞めた従業員が株主だと本当に面倒ですね。一般的には会社を辞めるぐらいですから、会社に対して良い印象を持っていることはないですし、居場所も特定できない可能性すらあります。今後上場審査がある会社では、株主が何者かというところも厳しくチェックされますし、株主と連絡がつかないとか、今何やっているかわからないということでは上場の足かせになりかねません。

このため、2年間は行使できない、上場しないと行使できないという条項は日本では合理的でもあります。但し、欧米の方が役員やスタッフになって、ストックオプションを付与する場合には、カルチャーギャップが問題になることもあることは知っておいた方がいいでしょう。

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