関連当事者その他の特定の者の整備の事例

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関連当事者その他の特定の者の整備は、一般的な事例というものはなく、会社の置かれた個別の状況等により対応方法が異なります。以下に実際の事例を基に、注意するべきポイントを上げていきましょう。

(a) 役員による債務保証取引を解消した事例
(状況)
上場申請会社S社はB社から本社建物を賃貸していた。代表取締役社長であるA氏は、当該賃貸借契約に関する債務保証を行っていた。

(ポイント)当該取引は合理性(事業上の必要性)はあるか
役員による債務の保証取引は上場準備会社ではよくみられる取引である。当該取引については、債務の保証がなければS社は営業を続けられないため、取引の必要性はあるように見える。しかし上場後に投資家から直接投資を受け資金を調達する会社が、事故に信用力飲みで営業を継続できない状況であることは、パブリックカンパニーとしての資格があるとは言えない。従って、当該取引は保証料の支払いの有無を問わず解消することとなった。

(b) 役員の兼任を解消した事例
(状況)
A氏は上場申請会社S社の取締役と、B社の代表取締役を兼任していた。

(ポイント)役員の状況に問題はないか
上場申請会社の常勤役員が、他の会社の常勤役員を兼任している場合、上場申請会社の経営に専念しているとは言えない。従って、S社かB社のいずれかの取締役は退任することが必要である。結果として、A氏はB社の取締役を退任した。

(c) 名目役員を退任された事例
(状況)
S社の100%子会社であるB社の役員に、S社の創業社長であるA氏の弟C氏が就任していた。なお、B社の取締役の中で創業者の同族はC氏のみであった。C氏には役員報酬が支払われていた。

(ポイント)役員の状況に問題はないか
B社の取締役の状況からは特段同族色が強いわけではなく、意思決定がゆがめられているような状況は見受けられなかった。しかし、C氏の取締役会への出席状況や実際に担当している業務内容から、名目的な役員であることが判明した。そのような役員がいる中で、公正、忠実渇十分な職務の執行は行えるはずもなく、また役員報酬の支払いにより不当に利益がS社グループから流出している状況であったため、C氏はB社の取締役を退任した。

(d) 不動産の賃貸取引を解消した事例
(状況)
S社が所有する不動産を取締役A氏、B氏に社宅として提供していた。家賃補助は行っておらず、家賃は近隣相場を勘案し適切に決定されていた。

(ポイント)当該取引は合理性(事業上の必要性)があるか
取締役が上場申請会社から不動産を賃借することが合理的に説明できる場合は、例えば役員を会社の都合で遠隔地から招聘する場合等の限られたケース以外はほとんどないと考えられる。これは家賃補助がなされているかどうかは問題とならない(たとえ不動産の賃貸は行っておらず、家賃補助のみ行っていたとしても問題になることは留意)。
このケースでは、賃貸取引は元より、S社が不動産を所有する必要性も問題となった。賃貸取引を解消したとしても、事業上必要のない不動産を所有することは、会社の資金運用や投資に対する方針とも整合していなかった。
そのため、当該賃貸借取引は解消され、不動産は売却されることとなった。A氏は不動産を第三者による鑑定価格で購入した。B氏は資金面の手当てができなかったため、賃貸契約を終了した。その後、B氏が住んでいた不動産は外部の第三者に売却された。

(e) 不動産の賃貸取引を解消しなかった事例
(状況)
S社は事業を多店舗で展開していたが、店舗のうち一部をS社の代表取締役社長であるA氏から賃借していた。

(ポイント)当該取引は合理性(事業上の必要性)があるか
当該取引は上場準備を開始する以前から継続する取引であった。また、S社は店舗用不動産を自社所有するのではなく賃借する方針であった。A氏からの不動産の賃借は事業上必要な取引であって、その立地状況から代替の取引先を探すことが難しく、他に有利な取引条件の取引先がない状況であった。このようなことから、当該取引を上場後も引き続き継続することが合理的と判断され、取引は解消しなかった。

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