未上場ベンチャー企業のストックオプション契約を考えていきましょう。発行手続きに関わる取締役会や株主総会の議事録、登記関係の書類など法的文書は多くありますが、ここでは株主総会を経て決議される要項と会社と役員・従業員の間で締結される契約書を考えていきます。
会社と役員・従業員等との二者間で締結される契約書の内容は、取締役会で比較的容易に変更できる可能性があります。実務上は後から作り変えたりすることもないことはありません。しかし株主総会で承認を得て登記までされた内容は簡単には変更できません。さて、ストックオプションの発行手続きについて、以下示しておきましょう。
【ストックオプションの発行手続き】
順番 | イベント | 書面 |
1 | 取締役会(案決定、総会招集) | 取締役会議事録、要項案 |
2 | 株主総会(委任) | 株主総会議事録、要項案 |
3 | 取締役会(付与決議) | 取締役会議事録、要項、契約書案 |
4 | 契約書(署名、捺印) | 第〇回新株予約権割当契約書、要項 |
5 | 登記 | 新株予約権申込内容証明書、議事録案 |
以前は一株の発行価格は5万円均一でしたが、近年は金額が緩和され、一株100円発行等もできるようになっています。大きな金額で株式発行した場合には、後で株式分割を行なえばいいだけですが、上場時に何単位程度が流通株式数になるかという見込みから逆算して決めることになります。ちなみにアメリカでは設立時の1株を1セントで発行することが多いので、個人のストックオプションが何万株というのはよくある話です。そのため、外人さんが日本の会社でストックオプションをもらったときに、100株くらいしかもらえないと若干拍子抜けされることもあります。一株当たりの単位が大きいんだよと、きちんと話せばわかってもらえますが。いずれにしても、自分が何株持っているかというよりも、会社全体の中で何パーセント持っているかの方が重要です。
日本ではベンチャー企業の数も少ないこともあり、あまりストックオプションを持っているという人があまり身近におりません。それよりも安定した会社で安定した給料をもらうことを尊ぶ国民性があるような気もします。そういっても自分の労力で稼げるのは限界があります。結局、時間単価で稼ぐことしか考えていないと、休みを削り、いかに残業したか(その残業がサビ残でなければいいのですが)という価値観になりがちです。そんなことよりも給与は多少安いかもしれませんが、ストックオプションをもらって上手く行ったらガバっともらえるというのも決して悪くはない選択です。もちろんもらえる保証がないから給料でもらった方がいいというのが確実で安全な稼ぎ方であることは確かですが。