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コーポレートガバナンスは企業価値を高めるためという議論を積極化させる必要があるのですが、どうも日本では取締役の不正をどのように防止するかという議論に終始する傾向があります。しかしそれはあくまでも企業価値を毀損させない施策でしかありません。
あと、経営者で「早く利益を出します。頑張ります!」と投資家に語る人もいますが、確かに企業で利益を出すことは望ましいことですが、ベンチャー企業の場合は、利益を出す以上に企業価値を高めることの方が大切です。赤字でも将来性を期待され、バイオベンチャーは早々と東証マザーズに上場させている会社もあります。それでしばらく赤字のままです。赤字は資金調達に一般的には不利に働きますが、だからといって企業価値を下げるかというと必ず下げるとは言えません。それは企業価値と利益の発生にはタイムラグがあることを投資家は認識しているからです。
この点、投資家目線や取引先や従業員の目線に違いが生じる最大の原因です。取引先、金融機関、役員、従業員は、今のメリットが大切です。顧客はモノやサービスを安く買えればいいし、金融機関は元本返済が困らなければいいし、役員や従業員は今の報酬や給与が高いことが望ましいのです。しかし株主は売却時に株価が高い、つまり企業価値が高い方がいいのです。
企業価値評価のところでも論じてきた通り、企業価値は企業が生み出す将来のキャッシュフローの現在価値となります。つまり企業価値とは、企業が今後成長するかどうかで決まるのです。決して今の利益で決まるわけではありません。その収益が急拡大するかどうかがポイントです。別の言い方をすれば、その収益が急拡大すると期待が持てることです。
急成長が期待できない企業であれば、目先の利益を出さないと価値は上がりません。そのためやはり今の利益も重要になってきます。今後、急成長が期待できる企業であれば目先の利益は二の次になります。つまり目先の利益が出なくても将来大きなキャッシュフローが期待できれば、現在価値、いわゆる株価は大きくなるのです。
投資家から大量の資金を調達できれば、当面の資金に個あることはありませんし、会社がつぶれることもありません。要するにキャッシュがあるかないかだけです。このために取引先への条件をよくする、ネット系サービスによくありますが、当面は顧客に無料でサービスを提供して囲い込む、あるいは優秀な従業員を採用するために高い給料を支払う、あるいは良い場所にオフィスを構える、パソコンなどの機器を新しくする等をお金をかけて行うことにも価値が出てきます。決してケチになって利益を出したからといっても、それが企業価値を向上させるかどうかはまた別の話です。
上記のように、今の利益を追求してコスト削減をモットーとする、銀行員のような投資家が入ってくると、ほぼ間違いなく企業価値の向上は見込めなくなります。