日本とアメリカのコーポレート・ガバナンスにおける人材についての違い

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日本では、投資家や社外取締役になれる人材の層がまだ薄いこと、ベンチャー側が投資家をどこまで信頼するかがまだ明確ではない、そして会社法上の制約等から、アメリカと全く同じコーポレートガバナンスの形はとれません。制度や文化の違いというものが日米においてあります。

ベンチャー企業は、設立や創業初期からM&A、上場以降までの経験を一貫して経験した人にアドバイスしてもらうことがベストです。しかし株式で資金調達を行うことが活発化してきたのは1990年代からですので、起業、育成、成長、上場等の一連の流れを経験した人はまだそれほど多くはおりません。以前は起業が難しい状況でしたし、起業しても継続させるのも困難な時代でしたから、成功者自体も数多くはありません。もちろん、今は起業も存続も楽勝だといっているわけではありませんが、依然と比較すれば少しは気持ちだけ容易になっていると思います。

こういった成功者が少ないだけでなく、成功者がいたとしても、まだまだ現役盛大であることが多く、社外取締役も引き受けてくれるような時間のある人はまだ少数派といえます。社外だから何もしなくていいというわけではありませんし、取締役としてなお連ねる以上、企業が何か問題を起こせば、平取締役といっても、全く責めを負わないわけにもいきません。従って、リスクヘッジもかねて、取締役会で発言すべきことは発言しておかないと、会社の行ったことで第三者に被害を与えれば、損害賠償の対象となることもありうるのです。

このような人材の層の薄さもあり、ベンチャー側がお金をかけて、さらに社外の取締役が取締役の過半数を占めれば、抵抗感も感じるでしょう。このときには3名の構成中、代表取締役、取締役副社長、そして取締役で、このうち1名が社外取締役ということになりがちなのではないかと思います。

しかも、このような取締役構成で、投資家と経営陣の利益が相反すれば、取締役会の決議が過半数を持つ方、たいてい経営陣が勝つわけですから、取締役会が経営陣と株主の双方の利害をフェアに判断する場になるとは考えづらいのです。従い、株主総会の権限を取締役会に移譲するということは簡単にはできないのです。

日本のほとんどの未上場企業の株式には譲渡制限がついており、株式に譲渡制限のある会社では取締役会に権限移譲できることが会社法で制限されています。合併や株式交換、事業譲渡等、さらに本店を移転する、ストックオプションを発行する等、全ての株主総会にかけ、されに特別決議が必要となってきます。この特別決議は、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成です。

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