さて、ベンチャーキャピタルにもシード期やスタートアップ期にお金を投じるところもありますが、それをクラシック・ベンチャーキャピタルと言います。それと異なり、レイター期(上場直前)に投資をするのをマーチャント・ベンチャーキャピタルと言って区別しています。まずその違いを確かめることの方が先です。いわゆるベンチャーキャピタルごとの投資スタンスを知っておくということです。
いずれにしましても、ベンチャーキャピタルはエンジェルと異なり、経済合理性の伴わない投資はしません。それだけ投資を受けるのは困難ではありますが、投資を受ける方もまたプロになれば、向かう方向性は同じですから、接点は必ず見つかります。それはあきらめないこと、そしてベンチャーキャピタルの質問に真摯に答えていくことが必要になります。
ベンチャーキャピタルに投資を受ける際の必要最低条件は、少なくとも会社を設立して数か月たってからにしないといけません。設立後すぐですと、なぜあなたが出資したときとそれだけ株価が異なるのですか?という質問への回答は難しくなります。仮に設立後1か月でベンチャーキャピタル周りを始めたら、その1か月の間に価値を上昇させる理由は何かをこらえる必要があります。単に1か月たったから自分のときの10倍の価格でとかは通用しません。例えば創業時にユーザーが1,000人だったものが1万人に増えていれば、価値は10倍かもねと言えますが、創業時のユーザーが1,000人だったものが1,200人しかなっていなければ、その200人に企業価値を10倍に高めるための意味は何なのかが知りたいのです。数字が1.2倍しかならなくても、なぜ価値が10倍になるのかを説明して、その根拠を示さなければならないのです。当然、ユーザーが10倍になっていたからと言って、優良顧客が1,000人いたのに、1万人に増えた9,000人が無料顧客だった場合には、10倍の価値なんてないことはわかると思います。単に数字だけではすべて判断してはなりませんし、プロの目をごまかすことはできません。
投資の交渉は投資家と既存の株主、そして経営者との利益が相反することが多いので、いくらプロだと言ってもベンチャーキャピタルの言うことを鵜呑みにすることはないと思いますが、社会経験の少ない起業家が百戦錬磨のベンチャーキャピタルを相手に理屈で対抗することは極めて難しいと思います。この辺はきちんとお金を払って外部の専門家を味方につけておくべきでしょう。こういうところにお金をかけられるかかけられないかが、起業家としての分水陵といっても過言ではありません。大抵ここでお金をかけずに自分でやろうとするので、鳴かず飛ばずになることが多いのです。
ベンチャーキャピタルがプロの投資家だということは確かですが、担当者によってはまだ未熟な人も残念ながらいます。担当者数が多かったり投資のノルマが多すぎて、個別の企業のために最適なスキームは何かを判断することがおろそかになったりもします。
具体的には上場が難しくなるにもかかわらず、上場が困難な資本政策を前提に投資が行われてしまうケースが散見されています。最終的には起業家自らでその目を養う必要があります。