上場企業の無形資産の割引率は、全ての資産の収益率を加重平均したものが、加重平均資本コストと同じになると考えて計算することになります。以下、単純化して図式化すると次のようになります。
借方 | 割合 | 期待収益率 | 貸方 | 割合 | 期待収益率 |
流動資産 | 0.2 | 2% | 負債 | 0.2 | 3% |
有形固定資産 | 0.3 | 7% | 純資産 | 0.8 | 12% |
無形資産 | 0.5 | X |
要するに無形資産の収益率を後から求めるという方法です。まずは貸方から見ていきましょう。企業が公表している貸借対照表をベースに考えますが、それをじかに直して、負債と純資産の割合を求めます。純資産は株価×発行済株式数で計算すればよいでしょう。株価についても発行済み株式数についても一定期間の平均値をとってください。実効税率を仮に30%とすると、加重平均資本コストは以下のようになります。
WACC=(1-0.3)×0.2×3%+0.8×12%=10.02%
次に資産項目の期待収益率を以下のようにあらわします。これは加重平均資産収益率といいますのでWARA(Weighted Average Return On Assets)とします。
WARA=0.2×5%+0.3×7%+0.5×X
WARAがWACCと同じ数値になるようにXを求めるのです。その前に流動資産や有形固定資産もできる限り時価で表して、割合を求めます。無形資産が時価にならないようにも思えますが、時価負債+時価純資産=時価流動資産+時価有形固定資産+時価無形資産が等しくなる割合を無形資産の割合とします。
また、流動資産2%とか有形固定資産7%の根拠ですが、ここでは、流動資産を例えば国債利回りあるいは銀行の預金利息とします。また有形固定資産はREITの平均収益率(あるいは不動産業者に委託したときの運用利回り)を当てます。
その結果、Xは15.04%となります。これが無形資産の期待収益率です。この方法では無形資産が複数の場合には難しくなります。しかし無形資産の期待収益率を算定する方法としては最も理論的と言えます。