非上場企業は、上場企業と異なり株価データがないのでβを測定することができません。CAPMは完全市場を前提とした株主資本コストの評価モデルであり、非上場企業ではその前提が全く成り立ちません。そこで、CAPMの過程の一部を緩和して修正を加えて導こうという考え方があります。そのうちの一つが個別銘柄のリスク感応度βの修正となります。
通常、ベンチャー企業を含む非上場企業では投資家自身が経営者であり、自ら経営に関与し、投資企業にフルコミットしているために、CAPMを用いた株主資本コストでは株式価値の過大評価となる可能性があります。ここで市場ポートフォリオへの投資を前提とした場合、βは次の算式で表せます。
β:ベータ
σi:個別銘柄の標準偏差
σm:市場ポートフォリオの標準返済
ρim:相関係数
βは個別銘柄の市場ポートフォリオに対するリスクの比(σi/σm)と、個別銘柄と市場ポートフォリオの収益率の相関係数(ρim)に分解することができます。後者が市場ポートフォリオのリスク分散効果に相当する部分と考えられます。従いまして、投資家が分散投資を行わずに投資先の全てのリスクを負担すると仮定した場合のβ(トータルβとする)は、分散投資におけるβを相関係数で割ることで以下のようにあらわすことができます。
トータルβ=β÷ρim
その他、債券のリスクプレミアムをまず導出しますが、以下の表のように債務履行と債務不履行のケースに分解します。Bとは元利債務総額、hは確率、δは回収率です。
確率 | 回収額 | |
債務履行 | 1-h | B |
債務不履行 | H | δB |
(1)
(2)
上記(1)式は、元本の現在価値を表し、右式で債務不履行時は元本の何割が返ってくるか、債務履行時には元本は全額返ってくるということを意味しています。ここで分母のkdは負債資本コストを意味しています。これについてkdを計算しますと(2)式になります。
ここから株主資本コストは以下のようになります。
(3)
1期分しか見ていないという欠点はありますが、参考になる非上場企業の株主資本コストの計算式です。予想デフォルト率と予想回収率についての計算は別途必要になります。