ベンチャーキャピタルから投資を受けられるための事業計画書のサンプルをくださいと、投資を受けたい起業家からよく言われます。しかしながら、投資を受けられたサンプルを渡して同じように書いたからと言っても、必ずしもあなたが投資を受けられるとは限りません。
あなたのビジネスの内容によっても、投資を検討してもらいたいベンチャーキャピタルによっても、さらにその時のビジネス環境、マクロ経済環境によっても事業計画で主張すべきポイントはものすごく変わってきます。
つまり投資家から投資を受ける場合に、決まった事業計画書の書式があり、その形式を満たしていれば必ず投資が受けられるということはないのです。そもそも投資を受ける必要のあるビジネスの大半は他人がやっていないことですから、100%成功する保証のないものです。100%投資が受けられる事業計画書を書いてくださいという人もいるのですが、それならば逆にあなたに問います。あなたはその投資を受けたら、確実に成功して確実に投資家に予定通りのキャピタルゲインをもたらせるのですか。仮にもたらせなかった場合、責任を取って、投資してくださった分を返却できるのですか。いや、投資だから損をすることもあります。そこ、逃げないでください。あなたが100%保証できないことを他人にも100%保証すべきではないのです。
事業計画書の中には意味不明にぶっとくて、内容もびっちりしたものがあります。もちろん薄っぺらよりもその方がいいと思いますが、ビジネス自体が薄っぺらでは意味がありません。むしろビジネス自体が薄っぺらい場合には、事業計画書がぶっとい方が説得力があるように見えます。ぶっとさで相手を圧倒する、みたいなですね。アメリカのベンチャーキャピタリストは騙せませんが、日本のサラリーマンキャピタリストであれば、その方がなんとかなることも多いです。
そもそもベンチャーの事業自体は実際にやってみるまでどうなるかわかりません。どうせそうなるかわからないなら適当でいいというわけではありません。事業計画とは投資家に投資してもらうための前提であり、投資家に対する約束です。
また、絶対に成功する事業計画が立てられるとは限りませんが、明らかにダメだこりゃ、という事業計画はわかります。例えば計画段階で前提が間違っていたり、成功の可能性が低そうであれば問題外です。起業家の中では思い込みが激しくて、競合は多いし、技術やノウハウが特に優れているわけでもなく、これといってネットワークもない。そもそもその技術が可能かどうかも怪しい。これ自分しか考えていないモデルです、といっても単なる調査不足でどこかの誰かがやっていたりする、そんなものも多いです。
あと、秘密保持契約を結ばないとこれ以上話ができないという人もかなりいます。100%とは言いませんが、そういう人の話は、それ以上聞いても無意味なことが多いです。つまり投資する価値がないということですね。本当にすごいものは簡単に真似ができるモノでもありません。秘密保持契約が必要ということは、その道の素人が聞いてすぐ真似できるくらいのしょぼいものな訳です。加えて、国家機密プロジェクトなんて意味不明なこという奴もいます。そんなすごいものをそんじょそこらのオッサンが知ってるわけないでしょ。
ちなみにアメリカでは、シードのステージでは秘密保持契約を締結しない場合が多いです。なぜかといいますと個人投資家の知識力では、その投資案件にあるところの技術力の判断がつかないため、専門家にヒアリングしなければ投資決定ができないからです。秘密保持契約を結んでいたら、逆に投資を受けられないと思ってください。本当のノウハウはひた隠しにしておくことをお勧めします。