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資本政策のスキームを種別に表にまとめました。
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概要 |
決議機関 |
資本政策における目的 |
特徴 |
留意事項 |
株式移動 |
事前に当事者間で合意して、株式譲渡・譲受を行うこと(会社法127) |
非公開会社(取締役会設置会社)の場合、定款で別段定めがある場合を除き取締役会決議(会社法139①) |
特定の株主の保有割合を増減させ、株主構成を是正する。 オーナー等の既存株主の資金調達 |
発行済株式総数を増減させずに株主の保有割合を変更できる。 |
株券発行会社の株式を移動した場合、株券を譲受人に対し譲渡人が交付しなければ、株券を占有しているものが権利者として推定される(会社法128、131)。また、株主名簿に住所・氏名が記載されるまでは株主として認められない(会社法130①)。 |
第三者割当増資 |
特定の第三者(役員、従業員、金融機関及び取引先等)に新株引受権を付与することによって募集株式を発行する方法。 払込金額は通常時価 |
非公開会社(取締役会設置会社)の場合、募集事項の決定は株主総会の特別決議(会社法198②、202③四、309②五)。但し、株主総会の特別決議により取締役会に委任することができる。なお、委任の有効期限は1年間(会社法200①③)。また、割当の決定は取締役会決議(会社法204②)。但し、定款で別段の定めが可能。 |
資金調達 安定株主対策・・・金融機関、取引先等への割り当て。 オーナー、役員の持ち株比率の是正。 従業員に対する福利厚生、従業員持株会への割当。 |
株主割当増資に比して、割当先や発行済株式数等の決定において自由度が高いため、使い勝手が良い。但し、通常時価で行われるため、割当先の資金負担が大きくなる。 |
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新株予約権付社債(非分離型) |
新株予約権を付した社債で新株予約権の分離譲渡はできない(会社法254②③)。 権利行使するときは社債の償還金を払込金に充当(代用払い込み)あるいは金銭を払込金に充当あるいは両者の併用(会社法281①②)。 |
非公開会社(取締役会設置会社)の場合、株主総会の特別決議(会社法238②、309②六)。なお株主総会の特別決議により、募集事項の決定を取締役会に委任することができる(会社法239①)。 |
資金調達 権利行使時の株主構成の是正 |
代用払い込み方式のものは、転換社債型新株予約権付き社債と呼ばれる。 引受人は権利行使するまでの期間は、確定利付社債としての投資利回りの確保ができる。 |
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株主割当増資 |
株主に対して一定の割合で新株引受権を付与し、募集株式を発行する方法。発行価額は任意。 |
非公開会社(取締役会設置会社)の場合、株主総会の特別決議(会社法199②、202③四、309②五)。但し定款で定めた場合は取締役会決議(会社法202③二)。 |
株主がほぼオーナー一族であるか、創業メンバーの場合で持ち株比率を変えることなく、資金調達と保有株式数の増加を図ることを目的として実施する。 |
第三者割当増資に比して資金負担が少なく保有株式数の増加が図れる。 失権株が発生しない限り、各株主の保有割合に変化は生じない。 |
自己株式を保有する発行会社が自ら割当を受けることはできない(会社法202②)。 株価が低く、失権の割合が高い場合は、課税されることがある。 |
新株予約権 |
あらかじめ定められた期間内にこの権利を行使することにより、新株の交付又は会社が保有する自己株式の移転を受けることができる(会社法2二十一)。 |
非公開会社(取締役会設置会社)の場合、株主総会の特別決議(会社法238②、309②六)なお、株主総会の特別決議により、募集要項の決定を取締役会に委任することができる(会社法239①)。 |
株主構成の是正 付与時の資金負担が僅少。 |
従来のストックオプションと異なり、付与対象者、行使期間、権利行使による発行株式数の制限がなくなったため、様々なバリュエーションが検討できる。 |
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ストックオプション |
ストックオプションは新株予約権のバリュエーションの一つ。 |
同上 |
会社の業績向上に向け、取締役・従業員をはじめとした会社内外の個人・法人にインセンティブを与える。 |
業績の向上などにより株価が上昇した場合、権利行使し株式を売却することにより差額を利益として享受できる。 業績向上に対するインセンティブを与える方法の一つとして位置付けられる。 |
税務上ストックオプションとしての税制優遇措置を受けるためには、付与対象者の限定と行使期間の制限等が生じる。 |
株式分割・無償割当 |
発行済株式総数の一定の割合で細分化することにより新株式を発行する方法(1株→2株等)。 |
取締役会決議(取締役会を置かない会社は株主総会の普通決議)(会社法183②、186③)。 |
上場後の株価を念頭において発行済み株式総数を増加させる。 |
全株主に無償で新株が交付されるため、株主に資金負担がなく、保有割合にも変化が生じない。 自己株式も分割可能(無償割当は不可)。 |
無償割当の場合は、株主に対し、割り当てた株式数を通知しなければならない(会社法187②)。 |
自己株式の取得 |
発行済の株式を自己で買入保有すること。 |
後掲参考1参照。 |
ストックオプションのための代用株式。 売却希望があるが、適切な買い手が見当たらない場合の受け皿。 |
自己株式の取得により議決権数が減少する。 |
自己株式の取得に関する留意事項等については、後掲参考1を参照。 |
自己株式の処分・消却 |
保有している自己株式を処分あるいは消却すること。 |
後掲参考1参照。 |
処分 株主の保有割合を変更される。 資金調達の役割を果たす。 消却 1株当たりの利益数値の向上を図る。 過剰な発行済株式総数を減じる。 |
処分の場合、取得前と比較して株主の保有割合が変化する。 発行済株式総数は処分では変動せず、消却では減少する。 |
自己株式の処理に関する留意事項等については後掲参考1を参照。 |
減資 |
資本金を減らすこと。 株主の持ち株比率に変動はない。 |
原則として株主総会の特別決議、但し、定時株主総会における決議で、欠損填補の場合は普通決議(会社法447①、309②九)。 |
事業縮小のための財産の一部払い戻し。 欠損金の補填。 増減資の組み合わせによる会社再建。 |
会社法において有償減資を行う際は、減資の決議と剰余金の配当の決議を組み合わせることになる。 |
資本減少決議がなされたら、債権者保護のために決議の日から2週間以内に官報に掲載するとともに債権者に個別に通知しなければならない(会社法449②)。 |
株式併合 |
発行済株式総数を一定の割合手併合することにより株式数を減少させる方法(2株→1株等)。 併合により1株に満たない端数が生じる場合に反対株主に買取請求権が発生する(会社法184の4)。 |
株主総会の特別決議(会社法180②、309②四)。 |
1株当たりの利益数値の向上を図る。 過剰な発行済株式総数を減じる。 株主管理費用の削減を図る。 併合割合を大きくすることにより零細株主の整理を図る。 |
全株式が同じ割合で併合されるため、株主の保有割合に変化は生じない。 併合割合を大きくすれば保有割合は変化する。 |
効力が生じる日の2週間前までに、株主及びその登録株式室権者に対し、株式併合に関する事項を通知もしくは公告をしなければならない(会社法181)。 併合により1株に満たない端数が生じる場合には、上記通知もしくは公告を効力が生じる20日前までにしなければならない(会社法182の2③)。 |
種類株式 |
利益配当や議決権を行使できる事柄について内容の異なる株式のことをいう(会社法108)。 |
後掲参考2を参照。 |
会社経営方法の選択し及び資金調達方法の選択肢を広げる。また買収防衛策のツールとして利用できる。 |
議決権行使に関心を持たない株主に低い価額で割り当てたり、特定の種類株主のみに取締役会・監査役の選解任権を与えたりすることにより資金調達をしやすくする。 |
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