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投資家との関係で重要なことは、起業家のリーダーシップです。ベンチャー企業の場合は起業家(創業者)が保有する持ち株比率ということもできます。当然、持ち株比率が高ければリーダーシップがある、低ければない、ということが言いたいわけではありません。持ち株比率が高くないと、せっかくのリーダーシップが発揮できないということです。
決して批判するつもりではありませんし、皆さん立派にこなしていらっしゃいますが、持ち株比率をそれほど多く持たないサラリーマン経営者は、就任時期を無難にこなすことしか考えていなさそうです。その時期にスキャンダルが起きたら、責任を取るだけの器でしかありません。頭下げて辞任すれば、禊が済んだといわんがばかり。まあ、スキャンダルを起こした時期は、前任者のときというのが多いですけれども。
無難に時を過ごさない人であっても、あと数年で任期が終了するような経営者が、「今は赤字ですが数年後は確実に黒字です!」と投資家相手にプレゼンしたところで、「そのときあなたいないでしょ」と思われ、あまり説得力がありません。どちらにしても、自分の後に無難にバトンタッチする必要もありますから、あまり大胆な策も取りづらいこともあります。
例えば1,000億円の利益が出ている会社が初年度10億円の赤字をだしてしまっても、将来性を考えて新規事業を行うことはそれほど難しくはありません。そういう会社であれは内部留保もありますから改めて説明も不要です。そのときに1億円しか利益の出ていない上場企業が、「イチかバチか新規事業を仕掛けます!初年度は10億円赤字覚悟です!」なんて話をしたら、株価が下落します。当然、じり貧な産業で、成長軌道に乗るためにどうしても必要な投資で、その投資が魅力的であると投資家誰しもが思うならば話は別ですが、そんなおいしい話はないでしょう。そのため、市場からの調達も難しくなります。
ここで未上場企業だったらどうでしょうか。企業価値がきちんと高められるという説明ができることが前提条件ではありますが、そのような新規事業に理解力のある投資家から資金を調達できれば、初年度に10億円の赤字が出るとしても、2年目か3年目に黒字になる等、明るい未来を説明することで、新規事業へ資金を投下することもできると思います。この点、日本の市場ではそれほどうまくいきませんが、上場しない方が日々の株価に一喜一憂しないために、思い切った施策が打てる可能性もあるのです。
ちなみにアメリカではグーグルやフェイスブックなどは未上場のうちに数千億円の資金を調達しています。これは日米の差ともいえますが、上場しない方が大量の資金を迅速に集め、しかも思い切った施策ができるという事例です。