インカム・アプローチは企業評価とほぼ同じプロセスで計算することになります。また、コスト・アプローチやマーケット・アプローチと異なり、将来の収益獲得能力を評価結果に反映させる点で優れた方式と言えます。
株式評価におけるDCF法では、企業が保有するすべての資産を活用して得られる将来のキャッシュ・フローを見積もります。事業活動から得られるキャッシュ・フローは、全ての資産を活用して獲得したものと考えますが、無形資産の場合には、その他の有形資産分の貢献分を控除しなければなりません。控除されたキャッシュ・フローをキャピタルチャージと呼びます。
次に予想期間については、株式評価におけるDCF法では継続企業を前提としていましたが、その無形資産には耐用年数があります。そのため、無形資産評価においては一定の耐用年数を見込んで当該耐用年数の期間を予想期間として将来キャッシュ・フローを見積もることになります。本来は経済的陳腐化を考慮に入れて、その分を耐用年数と考えるのが合理的ですが、税務上の耐用年数を用いるのが一般的です。
種類 | 耐用年数 |
特許権 | 8年 |
実用新案権 | 5年 |
意匠権 | 7年 |
商標権 | 10年 |
ソフトウェア(原本) | 3年 |
ソフトウェア(その他) | 5年 |
営業権 | 5年 |
その他にも数多くの無形資産がありますが、国税庁のホームページをご参考になさってください。
耐用年数を求めるための陳腐化には、物理的、機能的、技術的、経済的な陳腐化があります。近年では技術的進歩の度合いが激しく、事業の耐用年数は実際相当短期化していると言って良いでしょう。以前は、アイオワ州立大学で「工学的評価と原価」というテキストが発行され、工業資産の生存曲線に関する研究がなされていました。これをアイオワ・タイプ生産曲線と呼んでいます。これは保険会社が人間の寿命曲線を計算するのとまったく同じ方法で、工業資産の耐用年数を推定するために広く利用されてきました。技術的に優れていても、すぐさま次の優れた技術が登場する時代では中々合理的な耐用年数算出は難しいと考えられます。
そして割引率についてですが、株式評価におけるDCF法では株主資本コストと負債資本コストを加重平均したWACCを用いるのが一般的ですが、無形資産の譲渡を前提にすると、無形資産に特有のリスクを考慮した割引率を採用することになります。