企業評価の各アプローチには、それぞれメリットとデメリットがあります。従いまして、様々な評価アプローチを適用して評価した結果を踏まえて、総合評価を行うことがあります。総合評価の方法としては以下のような方法があります。
- 単独法:単独の評価法を適用し、それを持って総合評価の結果とする方法
- 併用法:複数の評価を適用し、一定の幅をもって算出されたそれぞれの評価結果の重複等を考慮しながら評価結果を導く方法
- 折衷法:複数の評価法を適用し、それぞれの評価結果に一定の折衷割合を適用する方法
ここでまず各アプローチのメリットとデメリットを示しておきます。
評価アプローチ | メリット | デメリット |
インカム・アプローチ | 評価対象企業の事業計画予測に基づいて評価することから、評価対象企業の固有の性質を繁栄する評価となる。 | 将来の事業予測に基づく評価であるため、予測の確実性に疑義がある場合には適切な評価とならない。 |
マーケット・アプローチ | 類似する上場企業の株価を採用する方法や類似上場企業の非雄株当たり経営指標を対象企業の経営指標との倍率を使用して算定する方法等、客観的な数値を使用するため、結果も客観的と考えられる。 | 評価対象企業の成長性と類似する上場企業の成長性が大きく異なる場合等においては、適切な評価とならない。 |
アセット・アプローチ | 評価対象企業の貸借対照表に基づいて、資産・負債を時価評価して企業価値等を算定するため、客観的に優れている。 | 事業継続を前提とした評価を実施するには、営業権等の資産を計上しなければならないが、そのためには、インカム・アプローチやマーケット・アプローチを用いなければならない。結局単独では使えない場合がある。 |
以上のような各評価アプローチのメリットやデメリットを踏まえますと、各評価アプローチは以下のように考えて適用すべきと考えます。
- インカム・アプローチの適用
第一に適用すべき評価方法は、まずはインカム・アプローチとなるでしょう。固有の性質を反映される最も適切な評価手法であるが故です。
- インカム・アプローチを補足するマーケット・アプローチの適用
インカム・アプローチの算定後、評価結果を検証するために、マーケット・アプローチを併用して、その差異を把握します。その差異が大きいときには、その原因を分析して総合評価を検討します。
- インカム・アプローチを適用できない場合
経営環境が不安定であったり、事業予測が困難な場合には、代替的にマーケット・アプローチを用います。そして評価対象企業が損失を計上している等、マーケット・アプローチの採用が難しい場合には、代替的にアセット・アプローチ採用するといった感じになります。