資本政策についても、ポジティブスパイラルを描く計画が不可欠です。事業にはやはりお金が必要です。お金は何といっても事業のガソリンですから、好循環を描くために適切な資金調達があるわけです。お金が苦しいから融資を受けるとか出資を受けるというような無計画な資金調達では、起業家に不利益になるものが多いと思います。
資本政策で一番注意しなければならないことは、そもそも資本政策を何のために作るか、よくわかっておらず、もちろん何のために作るかわからない段階ではそもそも作っていないのですが、会社の段階がアーリーのときに、外部の株主に株式を渡しすぎることがあります。資金調達できるし、困っているところを助けてもらえるのだからと、向こうの言いなりに多く持分割合を渡してしまうと、あとで困ります。こういったケースにありがちなパターンは、企業価値評価が低すぎるという場合が多いのです。
当然のことながら、起業家の夢が小さすぎて、収支が低く、その結果として企業価値評価が低いならいざ知らず、その場合にはそれほど巨額の投資が必要ないために出資金額も抑えられるはずですが、通常、起業家の夢は大きいはずなので、最初から大きな割合の持ち分を第三者に渡すようなケースはないはずです。言い換えれば、起業家自らの経営権を割安で売り渡すような収支計画は立ててはならないし、立てる必要もありません。
個人投資家から起業時に出資を受ける際には、会社持ち分割合も十分に注意しておくべきです。なぜでしょう。出資を受けようとする起業家に、お金を出してください、という人は多々いらっしゃいますが、その結果、どうなるかを理解していない人が多くいるのは不思議でなりません。
全額出資してもらったら出資した人の会社です。それであなたは何ですか?雇われ社長ですか。おそらく出資者はあなたのことを雇われ社長にするのであれば、自分の信頼しうる人物に経営者をお任せしようとするでしょう。誰がどこの誰だかわからない起業家にお金を出そうとするでしょう。
企業価値評価も必ず専門家にやっていただいた方がよいでしょう。これは株式は時価で取引すべきとする税務問題とも絡みますし、後でもめないためにも第三者であり専門家に依頼すべきです。専門家に依頼すれば、きっと持ち分比率のこともアドバイスしてくれるはずです。それを怠った場合は、その専門家はよくわかっていないため、単なるど素人という奴です。
創業者や安定株主も持分比率が薄まれば、自分のインセンティブも少なくなり、さらには経営もやりづらくなりますし、株式公開が困難な資本政策になる可能性も否定できませんから、注意しましょう。