DCF法と類似企業比較法の結果が異なる場合

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別の評価手法であれば、別の評価結果が出て当然、というのが実務上の現実ではありますが、理論的にはそうではありません。本来、類似企業比較法やDCF法等インカム・アプローチの手法は、全ての前提条件が適切に設定されれば、評価結果は一致するはずです。これらが異なる結果となるのは評価手法が異なるからではなく、前提条件が異なるからです。従いまして、同じ評価手法を用いたとしても、前提条件が異なれば、評価結果も異なります。

本来、類似企業比較法は、企業の財務数値が将来キャッシュ・フローの投資家予測に織り込まれて、株価となることを前提としたうえで、これを評価対象企業の財務数値に適用することで事業価値や株主価値を算定します。あくまでも投資家は将来キャッシュ・フローを見込んで株価としての結果が出てきているだけなので、それはDCF法の計算プロセスと何ら変わらないわけなのです。

しかし当然のことながら、前提条件が投資家によっても異なりますから、そこで出てきた株価も多くの前提条件がごちゃ混ぜになった結果にすぎません。ですので、ある評価者のDCF法に基づく企業価値評価が、現在の市場株価と一致することはないわけなのです。

さて、DCF法と類似企業比較法の結果が大きく異なる場合には、いずれかの前提条件が適切ではないことになります。例えばDCF法の算定に用いた将来のキャッシュ・フロー予測が現実的でないくらいに高い成長を見込んでいたとしたら、DCF法による算定結果は適切ではなく、類似企業比較法による算定結果の方が間違いなく低いことになるでしょう。

著しく双方の結果が異なる場合には、差異分析を行うことでDCF法の前提条件に不適切な点があることに築き、適切な評価へと修正することができます。つまり、それぞれの評価結果のその中間点を理論株価とする、と安直に考えるのは正しくありません。双方の違いが合理的な範囲になるように前提条件を再検討すべきです。双方の結果を相互に参照することで、それぞれの妥当性をチェックすることができ、それぞれの手法を単独で適用する場合よりも合理的な算定結果を導くのに有効なことになると思われます。

さて、類似企業比較法の弱点について上げておきましょう。

(a) 対象企業固有の価値及びリスクを考慮に入れず評価していること
DCF法では個別企業の収益性やリスクを評価しますが、類似企業比較法では市場株価と財務数値の関係で評価するため、評価対象企業特有の価値やリスクは見逃されがちです。これらは投資家の前提条件に組み込まれて株価に織り込まれていると考えています。

(b) 市場状況に強く影響されること
株価の動きを見ているとわかる通り、企業固有の要因以上に、マクロ経済の影響を受けます。マクロ経済が上向きの場合には、本来の価値よりも過大評価され、経済が不景気な場合には過小評価されることがあります。

(c) 評価者の主観が避けられないこと
評価者の主観についてはDCF法ほどではありませんが、類似企業比較法は完全に客観的でもないのです。類似企業の選定基準には、評価者の主観が入り込みます。そして類似企業の選定次第では価格操作が行われる可能性があります。第三者としては、どのような企業をどのような基準で選別したのかをチェックすることが大切です。

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