取引所による審査についての詳細①

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ここでは、書面審査とヒアリング審査について見ていきましょう。

1.書面審査

上場申請時に提出した申請書類及び関連資料の内容についての確認が行われます。定款、株主総会関連書類、取締役会や監査役会の議事録等を確認して、経営手続きの妥当性、会社計算書類や税務申告書ならびにⅠの部の記載内容等の確認により、会計・税務手続きの合理性と言った部分についての確認をして、さらに社内規程の整備状況、社内監査手続きの十分性、事業場のコンプライアンスに係る留意事項の有無等の確認がなされます。加えて、ここで上場審査基準の形式要件の大部分の充足状況についても確認が行われます。

2.ヒアリング審査

上場審査を行ってから概ね1週間から10日前後をめどに、取引所よりも申請時提出書類(特にⅠの部、Ⅱの部)の内容についての確認事項(質問状)が提出され、書面による回答の提出が求められます。申請会社は質問状の受領日から1週間程度を目安に、取引所に対して質問事項に係る回答書面を作成・提出した上で、回答書の内容についてのヒアリングを受けることになります。そして質問事項提示→回答書提出→ヒアリングというプロセスは、平均的に3~4回程度行われ、その際、1回の質問状に記載される確認事項の数は100項目近くに及ぶ場合もあります。回答に際して実績数値のデータや証跡等の提示が求められることもあり、この場合には必要なデータや資料を添付資料として考慮しなければなりません。

この質問事項で確認される範囲は、申請時提出書類の内容に関するものとなりますが、回答書の作成やヒアリングの対応にあたっては、各人事項の内容に係る部門の担当者が中心となってこれに対応しなければなりません。ここで留意すべきことは、取引所の確認事項では同様のテーマについて異なった視点から関連する質問が行われる場合も多いために、回答の作成やヒアリング時の対応にあたって、それぞれの回答内容に矛盾が生じないようにしましょう。また同じ理由で、回答に使用した数値データについては、常に同じ出所から道行くことが必要です。例えば営業部門と管理部門で集計のロジックが異なっていたために、本来ならば同一となるべき数値が設問の間で異なる、Ⅰの部等の記載内容と合致しないというケースが実例においても多くみられ、このような状況は審査において、経営管理体制や情報開示能力が弱いと受け止められてしまいます。

このようなミスをしないためにも、上場審査対応に関しては、事業上のデータや業績に係る数値を常に同一のマスターデータで管理し、回答の作成に当たっては各部門の作成担当者及びチェック担当者とは別に、条所プロジェクトの責任者が回答書や資料等の全体を通じて調整・確認を行うといったように、常に2段階以上のチェック体制を作りましょう。また、回答書の記載内容は申請会社としてオーソライズされたものでなければならず、回答書については権限者の確認・承認を得たうえで提出しなければなりません。ヒアリングの対応についても、取引所から体制面等についての改善要請や申請書類に関する修正の依頼が行われる場合が考えられるため、決定権を持つ責任者がメインとして対応し、実務担当者が補うように対応した方が良いでしょう。

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