サイズ・リスクプレミアムとは、企業の時価総額の違いに応じたリスクプレミアムです。CAPMでは、リスクプレミアムは個別銘柄のリスク感応度であるβと市場全体のリスクファクターである市場リスクプレミアムをかけたものとして表現されています。CAPM自体、完全市場を前提として成り立つモデルであり、CAPMで推計される利回りと実際の利回りが乖離する現象が多く発生しています。
実際のところ、時価総額別にみれば、リスク・リターンを比較すると、時価総額が小さい企業の方が、大きい企業よりもリスクプレミアムが大きいと考えられているのです。
難しい言い方をしますと、個別銘柄の期待利回りがCAPMに基づく理論値から乖離する現象をアノマリー減少と呼び、時価総額の小さい企業の株式の収益率が時価総額の大きい企業の株式と比較して高くなる現象を小型株効果と呼んでいます。
このため、実務上は、株主資本コストの算出においてリスクプレミアムの調整を行うことがあります。そのうちの一つとして有効視されているのが、以下のファーマ=フレンチの3ファクターモデルです。このモデルでは株式のリスクプレミアムを3つの要素に分けて見積もろうと試み、時価総額規模の違いによる収益率の差もその要素の一つとして取り入れています。
MRP:市場ファクター
一般的なCAPMで用いられるプレミアムです。
SMB:規模ファクター(Small Minus Big)
時価総額の大小である小型株と大型株の過剰リターンの差
HML:価値ファクター(High minus Low)
バリュー(PBRの逆数)の高い株式とグロース型の過剰リターンの差
それぞれのリスクプレミアムは感応度で調整されるようになっています。β1は、通常のCAPMと同じでβ2は0から1までの範囲で表され、小型株の場合はβ2=1、大型株の場合はβ2=0となります。またβ3も0から1までの範囲で表されますが、バリュー株の場合はβ3=0、グロース株の場合はβ3=1となります。
ファーマ=フレンチの3ファクターモデルは、小型株と大型株の差による超過リターンをサイズ・リスクプレミアムとして式に織り込んだものですが、この式に至るまでの理論的な裏付けがありません。単に、実際の市場を検証した結果をベースに帰納的に作られたものにすぎません。