フリー・キャッシュ・フローの源泉となるのは企業の事業活動から生じたキャッシュ・フローから税金を差し引いた残りと考えられます。そこでフリー・キャッシュ・フローの算定を行う場合には、利払税引前利益(EBIT)から実効税率の法人税等を控除することによって該当する利益を算出します。
EBITは会計上の営業利益に概ね相当するものです。それは、営業外損益は一般に支払利息を除いてほとんど発生しないからです。もちろん雑損失が多い場合は別であり、毎期継続的に発生するものであれば、実質的に事業から生じる損益の一部といなすことができるので、これらをEBITに含める必要があります。
例をあげますと、主要事業ではないものの、不動産の賃貸を継続的に行っている場合には、フリー・キャッシュ・フローに影響を与える収支とされ、不動産賃貸収入は、フリー・キャッシュ・フローに影響を与える収支となります。
特別損益は、臨時的、異常な要因や過年度の業績修正によって発生する損益ですので、事業計画の策定において見積もられる特別損益は原則としてないわけです。但し、遊休不動産の売却などを計画している場合には、特別損益を事業計画に反映させることになるものの、このような非事業資産から得られるキャッシュ・フローは、フリー・キャッシュ・フローに反映させず、別途、非事業資産の売却価値、として企業価値の計算に反映させるのが普通です。
また、訴訟等による損失については、将来の特別損失としてキャッシュ・アウトすることがありますが、この場合も確定時期を見込むのが困難であり、一定の前提条件に立った見積金額を企業価値から控除することによって株主価値を算定するのが一般的です。
営業損益は原則としてEBITに含まれますが、退職給付債務を有利子負債に準じて取り扱う場合、退職給付費用のうち、利息費用に相当する部分については、支払利息と同様にEBITの算定から除外する必要があり、営業利益に対して利息費用相当額を加算することで調整を行うことになるでしょう。
さらに、財務キャッシュ・フローは、これもキャッシュ・フローの一種でしょうということにはなりますけれども、フリー・キャッシュ・フローに入れ込むものではありません。財務キャッシュ・フローとは、通常、株主の発行、自社株買い、借入金の調達返済、社債の発行償還等が含まれます。これもまた企業価値の方で最終的に調整する項目になります。
キャッシュ・フロー計算書では営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、そして財務キャッシュ・フローがありますが、フリー・キャッシュ・フローの計算においては、最終的に現預金残高で一致することになります。