ストックオプションにおける相続・譲渡の場合

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「相続の場合、1回限り1人だけが相続して行使することができる」といった条項をストックオプションにつけることがあります。しかし、この相続に関する条件についても、要項ではなく、付与契約書の方に入れておいた方がいい場合が多いです。

ストックオプションを付与した役員や従業員が死亡し、関係者が後に残される可能性がありますが、その関係者が法律上の相続権者であるとは限りません。場合によっては彼女(あるいは内縁の妻)という場合もあります。ベンチャー企業というリスクの高い会社で安い給料で一生懸命働いてくれた従業員に、その夢にかけて尽くしてくれた関係者に何も残らないのも心情的にかわいそうですね。安月給で愛人を囲えるわけはないので、おそらく結婚はもう少し安定してからといって、内縁関係を維持している場合もあるかもしれません。男の夢を献身的にサポートして、カネでついてきていない女性こそ大切にすべきです。

当然のことながら、上場前や上場後のベンチャー企業ともなると法令や規則等で根拠のないお金を、残された関係者に支払えるとは限りません。一応、平成24年4月24日の最高裁判決において「株主総会決議による委任を受けて株主予約権の行使条件を定めた場合において、新株予約権発行後に上記行使条件を変更することができる旨の明示の委任がないときは、当該新株予約権の発行後に上記行使条件を変更する取締役会決議は、上記行使条件の細目的な変更をするにとどまるものであるときを除き無効である」との判決が出ていますので、昨今の実務では要項の中に行使の制約条件を盛り込むことが多くなっていますので、注意が必要です。

ベンチャー企業に関わるような人は、定年退職後でなければ比較的若年層が多いと思われ、通常は死亡することは想定できない年齢ではないかと思います。突然亡くなったケース等、要項でなく、付与契約書に書いておけばどんなケースでも対応可能というわけではなく、あまりにフレキシブルな対応をしすぎると、全員に対して柔軟な対応を迫られることになり、際限がなくなります。とはいえ、契約書の方に書いておき、選択肢を増やしておくというのは決して悪いことでもありません。要項に記載したら原則変更は不可です。

色々見ては参りましたが、ストックオプションというものは、単なるドライな金融商品ではなく、人のやる気、つまりインセンティブや働いてくれた人に対して報いるためにあります。契約とか制度とかそういった技術ではなく、むしろ「人の気持ち」であったりします。そのため将来展開される人間ドラマを考えて設計しなければなりません。経営者は機械的に、会社の貢献度、入社年数、あるいはなんとなく好きか嫌いかだけで決めたがりますが、まあ、そうでしか決められない側面はありますが、彼ら彼女らのその後の人生を色々と考えながら設定していくべきものです。その想いは通じるかもしれません。こちらの優しい思いは得てして通じませんが(笑)。

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