ストックオプションにおける買収された場合

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2年間行使できないのはさておき、上場まで行使できないといった条項を、株主総会で決議する要項に入れている場合、仮に会社が上場を断念し、買収されることになったらどうなるでしょうか。

上場を断念し、買収もされない場合をリビングデッド(Living Dead:生きる屍)と表現しますが、このケースであれば会社の給料に魅力がなければ去るだけの話ですからどうでもいいのですが、一従業員として公開を目指して徹夜もして頑張ってきて、公開できないから大企業から買収してもらうことになるというのはよくあるケースです。この場合でも、シリコンバレーではAcqui-hireといって、買収のAcquisitionと採用Hireの組み合わせ造語で、買収される企業の視点から見ると、先行き定かでない場合は起業家としては会社をたたむよりはメンツを保つことになり、しかも投資家に返済出来て、創設者全員にお金も入ります。スタッフとしては大企業の子会社ではありますが、安定的な給料をもらえる可能性が高まりますのでラッキーと言えなくもないケースです。

しかし自分のストックオプションはほとんど紙屑同然か、あるいはやむを得ず行使して小銭でも手に入れることもできます。しかし株式を大量に保有している社長と少数の人だけがそこそこ金を得られるにもかかわらず、多くの従業員は買収で何のメリットも得られないということが往々にしてあり得ます。

上場を目指して頑張っている会社に入社してくれた従業員は、やる気に依存した成長モデルなわけで、従業員のやる気が失われると企業価値が減少しかねない場合は、上場しなければ行使できないというストックオプションの条項が問題になりかねません。経営者としても、頑張ってくれたスタッフに何とか報いたいと思って、社長が自らの売却益からお金を分配する、そんな人もいます(稀ですが)。そういう気持ちを税制が阻害するのです。株式の分離課税は20%程度ですが、贈与や給与というと高額な税率がかかってくるケースがあります。会社の利益から賄おうとすると、ボーナス支給では利益にヒットします。結局、決算の都合でそんなにお金が出せないという結論にもなってしまいます。

この点から考えますと、行使時期に関する制限は株主総会決議(要項)では決めるのではなく、従業員と会社の間の契約書に書いておく方が状況に応じてフレキシブルに対応できるといえそうです。

さて、せっかくですからAcqui-hireについてもう少し。スタートアップに関わる人の多くは、自分で稼げる力のある人がほとんどです。中には大企業に無関心な人もいるでしょう。しかしその優秀な人を、子会社であっても抱えられるというのは大企業にとって魅力です。会社を買収する金額の中で、優秀な人材を囲い込むことができるわけですから。そして一緒に上手く働くことが確証されているチーム全体を手に入れられるチャンスでもあります。一人一人採用していくのは手間ですし、その人が他の人と合わずに機能しない可能性もあるわけです。Acqui-hireは才能ある人材を採用する有望な方法の一つなわけです。人を買収するということもあるため、出来る限り優秀な人材を集めておくことが、M&Aを成功させる一つの方法でもあります。

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