新規上場企業の資本政策を見ると、同日に異なる株価で増資が行われている場合があります。例えば従業員持株会には低額で、ベンチャーキャピタルにはその何倍もの価格でと言った感じです。このように未上場株の価格設定は取得者の属性に合わせて自由に設定されている面がありますが、税法に抵触しないよう、また上場審査において合理的な説明ができるようにしておかなければなりません。
取引所規則に記載してある株価算定方式は以下の通りです。
(1) 純資産方式
企業のストックとしての純資産に着目して企業の価値及び株価を算定する方式です。貸借対照表を基に算定しています。不動産を所有する企業、その含み資産を考慮する時価純資産法は実務上よく利用されています。
(a) 簿価純資産法
簿価純資産額÷発行済株式総数
(b) 時価純資産法
(時価純資産価額-含み益対応法人税等)÷発行済株式総数・・・法人税等控除方式
時価純資産価額÷発行済株式総数・・・法人税等非控除方式
(2) 収益方式
企業のフローとしての収益や利益に着目して企業の価値や株価等を算定する方式です。
(a) 収益還元法
(将来の予想年間税引後利益÷資本還元率)÷発行済株式総数
(b) ディスカウンテッド・キャッシュフロー法(DCF法)
事業が生み出す将来のキャッシュフローの現在価値を基に企業価値又は株式価値を評価する方法
3. 配当方式
企業の利益処分のフローとしての配当に着目して企業の価値及び株価を算定する方式です。
(a) 配当還元法
(将来の年間予想配当÷資本還元率)÷発行済株式総数
(b) ゴードンモデル法
一株当たり配当金÷(資本還元率―投資利益率×内部留保率)
4.比準方式
算定対象会社と業種、規模等が類似する上場会社又は同じ業種の上場会社の平均とを比較して、会社の価値及び株価を算定する方式です。
(a) 類似会社比準法
A×L×(B’/B+C’/C+D’/D)÷3
A:類似会社平均株価
B:類似会社平均1株当たり配当金額
C:類似会社平均1株当たり利益金額
D:類似会社平均1株当たり純資産金額
B’:新規上場申請者1株当たり配当金額
C‘:新規上場申請者1株当たり配当金額
D’: 新規上場申請者1株当たり配当金額
L:類似安定度を加味する項目(①自己資本、②総資産、③取引金額、④自己資本比率、⑤企業利潤率等について、新規上場申請者と類似会社を比較考慮して算出)
(b) 類似業種比準法
A×0.7×(B’/B+C’/C×3+D’/D)÷5
※記号は同上
(c) 取引事例法
過去に実際の取引事例がある場合、当該価格を基にして株価を算出する方法です。
5.併用方式
各種方法を組み合わせて株価を算出する方法です。