子会社や関係会社がある場合の上場審査の考え方

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子会社や関係会社が存在する場合は、それらの会社を持つことが妥当であるかどうかを検討する必要があります。当該会社を有することが妥当ではないと判断されれば、その関係を整理しなければなりません。それらの会社を持つことが妥当であったと判断された場合には、当該会社との取引状況や管理体制について検討を進めていくことになります。上場審査における審査の視点と、それに対応する具体的な検討項目は以下の通りです。

(a) 存在に合理性(事業上の必要性)があるか
子会社や関連会社となるに至った経緯を、出資日や出資比率の推移と、当該子会社や関連会社のグループ内における位置づけや事業上の必要性についても合理的に説明できるようにしておきましょう。
上場申請会社の行っている事業との関連性があまりなく、シナジーも望めないような事業を行っている子会社や関連会社がある場合には、存在に合理性(事業上の必要性)があるとはいえません。そのような子会社は審査上問題となることが多いため、株式の売却等の整理が必要になってきます。
また、上場申請会社が行っている事業と同種の事業を関連会社が行っている場合であっても、わざわざ別法人で行うことの理由が問われます。地理的な問題から特定の地域における従業員の労働条件について、上場申請会社と区別が必要があるため別会社としているような場合には問題とはなりません。
子会社や関連会社の中で100%の出資比率になっていない会社がある場合は、その他の株主が存在する理由、経緯についても明確に説明できなければなりません。上場後に株主となる投資家には、上場申請会社グループの利益が適切に還元されなければならないのですが、上場申請会社の資本下位会社の持分比率が100%になっていない場合は上場申請会社のグループの利益が流出するからです。例えば、営業上の問題点を解決するために、他の会社や個人の合弁で子会社を設立したため100%の出資比率になっていないケースは合理的に説明はできるものと思われます。
このように、子会社や関連会社の存在や出資比率に合理性(事業上の必要性)があるかどうかを検討し、問題があれば関係を解消することを視野に入れなければなりません。

(b) 取引内容・条件に合理性(事業上の必要性)があるか
子会社や関連会社と取引を行う場合、当該取引を行う合理的な理由があるのかどうかということを検討しましょう。製商品の売上・仕入については外部業者との間に入ることでマージンを抜きすぎていないか、貸付や債務保証について上場申請会社が行う必要があるか、固定資産や不動産の売買・賃貸借取引についても行う必要があるか等、子会社、関連会社との全ての取引について検討が必要となります。
取引を行うこと自体に事業上に必要性がある場合には、取引条件も検討が必要です。取引価格や支払条件、利率等は基本的にはグループ外の第三者と取引を行った場合と同様の条件でなければなりません。取引条件が第三者との比較において妥当と認められる場合であったとしても、その取引行為に合理性(事業上の必要性)がない場合には利益供与とみなされ、審査上問題となります。
利益供与とみなされる取引行為等であるかどうかの判断のポイントは、上場申請会社の経営者が個人としてではなく、会社の利益を第一に考えたときに、その取引行為等を正当なものとして合理的に説明できるかどうかです。

(c) 役員の状況に問題はないか
子会社や関連会社における経営上の意思決定が適切に行われているかどうか、役員の就任状況を調査する必要があります。子会社において同族色の強い役員構成の場合においては、同族役員の影響力が強いことが想定されるため、適切な意思決定が行えない可能性があります。従って、各同族役員の就任経緯及び管轄業務、報酬の水準を検討する必要があるわけです。
また、申請会社との兼任役員の報酬の支払状況についても検討が必要です。兼任役員について、申請会社に加え子会社でも役員報酬を支払うことは利益調整の余地が残るため望ましいとは言えないからです。

(d) 経営状況が悪くないか
上場審査は上場申請会社のグループ全体として実施されるため、経営状況が悪い子会社や関連会社があれば当然問題となります。赤字又は債務超過の会社が存在する場合、業績の回復のめどが立っているか、そのための施策は立案されているのか、事業計画が合理的に策定されているのかを検討する必要があります。

(e) 管理体制が整備されているか
上場審査は上場申請会社のグループ全体として実施されるため、子会社や関連会社の管理体制についても審査されることになります。それらの会社を管理する部署は定められているか、管理する規程は整備されているか、子会社や関連会社における重要な意思決定に関して上場申請会社が関与する方法及び決定事項の報告様式、頻度等について定められているか検討しなければなりません。
特に財務数値の管理報告体制について、子会社や関連会社において一般に公正妥当と認められる会計基準が採用されているか。上場申請会社との会計処理との整合性は図られているかどうか、上場申請会社における利益管理は連結ベースで行われることが必要であるため、子会社や関連会社も含めた形で連結予算が策定されているかどうか、および月次での財務数値の報告と分析がなされているかどうかを検討する必要があります。
また、発生が予想されるコストを考慮することも重要です。上場申請会社で子会社や関連会社を管理するコストには、体制を整備するコストと運用に関するコストがあります。上場申請会社側で管理体制を整備するためのコスト、及び子会社や関連会社側で管理体制を整備するコストも考えて、コストが多額になる場合は、合併等でそれらの会社との関係を整理する方が合理的な場合もあります。

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