ここでは顧客リストの評価を行う場合のキャッシュ・フローの見積もりについて考えてみましょう。
まず、顧客リストとは、顧客との契約、顧客との関係のことです。そして顧客リストは顧客に関する情報が文書化されている場合に、特定の業種において無形資産として認識される場合があります。また、顧客との関係は会社が過去において特定の顧客と継続して取引を実行している場合には、取得日時点における会社と顧客との契約の有無にかかわらず、無形資産として認識されます。
- 収益の見積もり
顧客リストに記載されている契約内容から、評価基準日時点の顧客リストから生み出される予測収益を特定します。
次に、上記予想収益に将来の顧客減少率を加味して、顧客減少率を反映させた顧客リストの収益を見積もります。この顧客減少率の推定によって顧客がゼロになる時点までの期間が収益予測の予測期間となります。
- 営業費用の見積もり
顧客リストに関わる営業費用を見積もります。業態によって異なりますが、顧客リストの維持に係る費用も含まれますから、飲食店や美容室等はダイレクトメール等の広告宣伝費も入るでしょう。B2Bの業態の場合には、その会社との連絡を密にするための旅費交通費も営業費用に入ります。次に、顧客リスト以外の資産を用いて収益を生み出している場合、顧客リスト以外の資産について、使用料相当としてのキャピタルチャージを見積もります。
上記収益及び費用の見積もりから、税引後の将来キャッシュ・フローを算出します。上記の税引後将来キャッシュ・フローを適切な割引率で現在価値に割り引くことによって得られた現在価値が無形資産の評価額になります。また、顧客リストに関わる費用について、他の事業との切り分けが難しい場合には、企業全体の売上高の中で、その売上リストに関わる売上高の比率を用いて、企業全体の費用から推計する方法もあります。
また、インカム・アプローチにおける顧客リストに評価は、評価基準日における既存顧客から生み出される将来予測期間の収益のみを用いて行い、新規顧客に関連した収益は計算に含めません。
顧客リストについても、時間の経過とともに顧客が減少することを織り込む必要があります。特に契約期間が決まっているような場合には、契約期間の満了や解約で、その顧客リストに残っている顧客は将来的にゼロになっていくことが想定されます。この予想方法は、過去の顧客推移から計算した年間平均顧客減少率を用いることで評価基準日からの耐用年数を計算することができます。