退職給付債務の評価法

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退職給付債務は決済されるまでの期間が長期にわたる長期債務であることで、現在価値に割り引かれるため退職給付費用に利息費用が含まれていること、一定の仮定に基づいた見積もり計算による債務であることに特徴があります。

A:退職給付に係る負債を有利子負債とみる方法
評価基準日時点の退職給付に係る負債を有利子負債と同じように考え、退職給付に係る負債を企業価値から控除する方法です。
退職給付に係る負債を有利子負債ととらえるために、フリー・キャッシュ・フローからは退職給付費用に含まれる利息費用や期待運用収益を控除します。
なお、WACCの計算では利子費用を負債資本コストに含め、負債比率においても退職給付に係る負債を他人資本に含めて考えます。
退職給付に係る負債には、未認識数理計算上の差異と未認識過去勤務費用が含まれていますので、退職給付に係る負債を企業価値から控除する場合、当該未認識費用項目の費用科学である数理計算上の差異に係る当期費用処理額及び過去勤務費用に掛かる当期費用処理額がフリー・キャッシュ・フローに含まないようにします。
また、退職給付に係る負債は計上時に税務上の損金とはならず、将来の年金掛け金支出時や退職金支払い時に損金算入が行われますので、将来の税効果があります。

B:退職給付に係る負債を運転資本とみる方法
退職給付費用に含まれる利息費用や期待運用収益を将来フリー・キャッシュ・フローに含めて考える場合、評価基準日時点の退職給付に係る負債を有利子負債として企業価値から控除する必要はありません。そして運転資本として将来の残高増減によるキャッシュ・フローの影響を株主価値の算定に見込むことになります。
このとき、退職給付に係る負債の残高が一定のまま将来も継続すると仮定する場合は、将来のフリー・キャッシュ・フローに影響を与えず、退職給付に係る負債は株主価値算定において控除する必要はありません。
しかし退職給付に係る負債が近く現金決済される場合には、運転夫妻の減少として、株主価値から控除します。
退職給付に係る負債の税効果は、退職給付に係る負債の残高が一定と考える場合、特に考慮しなくてもかまいません。しかし退職給付に係る負債が近い将来に現金決済されると考える場合には、当該決算時の損金算入を踏まえて税効果の影響を検討しなければなりません。

退職給付に係る負債の考え方はいくつかありますが、フリー・キャッシュ・フローの予測の差異に、利息費用や未認識項目を踏まえた退職給付費用や退職給付に係る債務残高の見積もりが正確にできないため、重要性と合理性を重視しつつも簡単な取り扱いが必要となります。事業計画における退職給付費用に含まれる利息費用の分離が困難な場合、退職給付費用に係る債務を運転資本としてとらえますが、日本では退職が即時行われると考えることは少ない(少なからず退職金を支払う前に退職してしまう人が増えてきた)ために、負債類似項目として企業価値から控除する取り扱いの方が理論的と言えます。

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