バリュードライバー法は、企業がNOPLATの一定割合を再投資し、それがNOPLATを一定の割合で成長させるという前提に基づき、永久成長率法に修正を加えた算定方法を言います。以下の算式によって継続価値を見積もります。
TV:継続価値
NOPLATn+1:継続価値算定期間初年度の標準化されたNOPLAT
ROIC:投下資産利益率
r:割引率
g:成長率
ROICとは投下資産利益率(Return on Invested Capital)のことで、NOPLATを事業用資産で割ることで求められます。ROAやROEが会計上の利益や資産または純資産を対応させることで算出されますが、ROICは財務の観点から会計上の利益と資産を再構成することによって求めた収益性の指標で、非事業資産や有利子負債の影響を排除し、純粋に事業の収益性を示すという特徴があります。
ROICの分子にはNOPLAT、つまり支払利息や事業に関係のない損益の影響を除いたのちの税引後利益が用いられ、分母には事業用資産が用いられます。このため、非事業資産や資本構成の影響を除いた事業からのリターンを抽出することができます。
DCF法は事業から得られるフリー・キャッシュ・フローを現在価値に割引き、非事業資産と有利子負債等を調整することで株主価値を分析する手法です。そのため、会計上の数値ではなく財務の観点から再構成したROICが有用となります。
バリュードライバー法は利益の一定割合をROICと同じ利回りで再投資し、それが利益の成長に貢献するという前提の下で永久成長率法に修正を加えたモデルとして考えられます。この手法を手供するためには、将来のROICと利益に対する再投資の割合を定量化する必要があります。従い、予測損益計算書や予測貸借対照表の作成が原則として前提となります。
永久成長率法とバリュードライバー法の違いは、成長率をモデルの外部から取り込むか、再投資の過程から内省的に求めるかの違いです。つまり、永久成長率法の成長率は、アナリストの予測や経済の長期的成長率というモデル外部の要因に左右されますが、バリュードライバー法の成長率は、利益に対する再投資の割合と斎藤氏から得られるリターンを乗じすことで算定されます。但し、経済の長期的な成長率と乖離しすぎるのは問題です。
これら二つの手法の違いは主として成長率に対する考え方にありますので、成長率を考慮しない場合には、どちらの手法を取っても継続価値は同じになります。