妥当な持株比率を法律から考えるために株主総会決議を概観しよう

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持分次第では自分が経営者でいられなくなる、そういったこともあるのが株式会社です。投資家は自分の投資したお金を回収して、さらにビッグなキャピタルゲインを得たいわけです。今の経営者がそうしてくれればいいし、そうしてくれなさそうで、もっとふさわしい経営者がいると判断すれば挿げ替えるのが当然です。

プロ野球やサッカーチームを見てください。成績が悪ければ監督がポンポン変えられますよね。あれと同じです。ファンは成績が悪ければ監督の責任だのと言いだして、シーズン途中でも今すぐ監督を解雇しろと好き勝手に言ってますよね。そのくせ、シーズン途中では悪くても終盤に追い付き優勝したら手のひらを返したように「名将」呼ばわり。中々ビジネスの世界ではV字回復も難しいでしょうが。

起業家としては自分の作ったビジネスですから、自分が希望している限り会社にとどまりたい、社長をやっていたいと思うのが当たり前です。であれば、株式の持分次第で何ができるのかを考えてみましょう。その前に株主総会決議を概観します。日本の会社法ではその要件の違いで、普通決議・特別決議・特殊決議の3種類に分かれ、その他に株主全員の同意があります。決議要件は以下の順に厳しいものとなります。

(1) 普通決議
会社法に別段の定めがある場合を除き、普通決議の方法により株主総会は決議を行います(会社法309条1項)。そして定款に特別の定めがない限り、議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の過半数により決議することになります。

(2) 特殊普通決議
役員の選任・解任に関して行われる決議については、この方式によります(会社法341条)。定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の過半数により決議します。

(3) 特別決議
一般に重要な意思決定について用いられる加重された要件による決議です(会社法309条2項)。議決権を行使可能な株主の議決権の過半数を定足数とし、出席株主の議決権の3分の2以上により決議します。

(4) 特殊決議
(a) 309条3項の特殊決議
定足数に制限はなく、議決権を行使可能な株主の半数以上(議決権の過半数ではありません)と、議決権を行使可能な株主の議決権の3分の2以上に当たる多数により決議します。
(b) 309条4項の特殊決議
定足数に制限はなく、総株主数の半数以上の株主(議決権の過半数ではありません)と、総株主の議決権の4分の3以上により決議します。

(5) 株主全員の同意
細かいところは会社法の教科書を見てくださいとなりますが、例えば発行する株式すべてに取得条項の設定・変更をする定款変更や、組織変更等の場合にこの要件が必要になります。

以上を見る限り、経営者が自己保身のために必要な株式持分がどのくらいかという視点で見れば、全員が株主総会に出席するとした場合(委任状を含む)、51%を持てば一応安泰ということになります。逆に言えばあなたが49%しか持っていなくて、他に誰も賛同者がいなければあなたはサヨナラになる可能性もあるということになります。

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