企業価値評価はDCF法で決まります(マーケット・アプローチ等他の方法もありますし、インカム・アプローチにはDCF法以外にも色々な方法があります)。しかしながら、いくらで株が売れるかについては、DCF法で株価を決めてもその株価で確実に取引されるわけではありません。あくまでも参考値にすぎません。
特に創業時のベンチャー企業については、体制も整ってはおりませんし、売上もほとんど立ってはおりません。このような段階でいかに立派な事業計画書を作っても絵に描いた餅でしかありませんし、立派な事業計画書を書いたからと言って確実に資金調達ができるものでもありません。言えることはとにかく事業計画書を作ることが資金調達においてのスタート地点であるということだけです。
企業価値評価は千差万別あって、創業期の企業価値評価にスカッと当てはまるものはありません。そうなるとどうやって株価が決まるのかと言いますと、DCF法は交渉の参考値としてでしかなく、詰まるところ資金と求める起業家と投資をする側の需給バランスで決まってくるということになります。投資家が殺到するような会社は企業価値が高くつくし、誰も投資してくれなくて頼み込んで出資してもらわざるを得ない会社は企業価値が低くしかならないということなのです。
もう一つ、言っておかなければならないことがあります。そのときに人気があっても高い株価で資金調達をしてしまっていいのかということです。例えば、その後、その事業計画が実際に達成できなければ、結局、資金調達した経営者が後で苦しむことになります。要するにプロ野球のFA宣言でカネだけで選んでしまうと後が大変になるのと同じことです。投資契約や優先株式で企業の調子がお怖しくないときに上手く調整できれば良いですが、創業時は普通株式で投資を受ける場合が多いでしょうから、投資家は自分が投資したときより安い株価でその後ファイナンスを受けることを嫌がります、その投資家が、その投資に対して拒否権を発動すれば、追加出資自体が受けられなくなします。
同じく、事業をM&A等で外部に売却したいときに、他の企業に買収されることを考えると、高値で投資を受けた投資家に買収に関する拒否権があると、買収してもらえなくなります。
このように、企業価値が安くて投資を受けてしまって、良いことはありませんが、企業価値が高くて投資を受けたから特になるともいえないということは心にとめておきましょう。全ては身の丈に合ったファイナンスが良いということになります。あまりブームに乗って調子をこいてはいけません。