売り上げ規模が年商100億円で、利益が5億円と想定されれば、本則市場やジャスダックを狙えるのだが、本則市場の同業他社と比較すると、実績が既上場の同業上位会社の後塵を拝する状況にあることから、市場内で埋没し、投資家の目に留まらなくなる恐れがある。更に投資家から見た本則市場のイメージが新興市場に比べて成熟した企業のイメージが強く、将来的な成長が保守的に考えられやすい傾向がある。
このような企業の既存の同業他社の成長カーブが比較的緩やかであるとされていれば、当該会社に極めて新しいコンセプトが確立されていなければ、高い成長可能子を求めているマザーズ、企業の成長性を明確に定めているジャスダック・グロースといった市場でも審査場は不利になってしまう。そうなると成長性次第ではあるが、ジャスダック・スタンダードというものが最有力候補になりえることもある。全部が全部、新興市場がマザーズと考えるのも良いこととは思えない。但し、会社の事業展開の方向性等によっては、今後の成長シナリオと業績規模の状況を見極め、最初から本則市場を選択すると言った対応も考えられる。
実際は企業の売上・利益規模だけでなく、株主数や流通株式の状況、会計監査人による意見表明の状況や、例えば関連投資者との取引といった内部統制上の個別事項に係るそれぞれの取引所の判断等を考慮しなければならない。
また、東京証券取引所とロンドン証券取引所との合弁で創設されたTOKYO AIMは、平成24年7月に東証に吸収合併され、市場の名称が「TOKYO PRO MARKET」とされた。当該市場は柔軟な上場ルールを持ったプロ向け市場として、新興企業の資本流動化の活性を目指して創設されたものであったが、まだ上場銘柄が多くなく、事情選択の判断がしずらい状況と言ってよい。しかも当該市場の特性として、英語による開示、国際会計基準の適用が可能であること、さらに取引所による審査を必要とせず、機動的な上場スケジュールやファイナンス・ストラクチャーの設計ができることからして、得に知名度の高い外国企業が日本国内戦略的に株式の売り出しを行う場合や、内国企業でも大型の未上場企業が短期的に株主構成の変更を行う場合等に利用することが有効と考えられている。
そして市場の流動性等の面において課題があり、対策が講じられていくと思われるが、現状において当該市場の選択を検討するにあたって、指定アドバイザーや流動性プロバイダーとなる証券会社等との間で、事前に慎重かつ十分な協議を大なうことが必要となる。