上場審査に重視される労働時間管理

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労基法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者は、労働時間を適正に把握する等労働時間を適切に管理する責務を負わなければなりません。以下、上場審査という観点から見ていきましょう。

上場審査においては、労働時間の把握方法は未払い賃金の有無を確認するための前提として注目されるポイントで、「新規上場申請のための有価証券報告書(Ⅱの部)記載要領」においても、「時間外労働及び休日労働の管理方法(労働時間の記録、管理職による商品、人事担当部署による管理の方法を含む)」や「時間外労働の状況」について記載が求められています。また、個人別労働時間の月次集計表の提出を求められることもあります。必ずしもタイムカードなどを導入しなくても、客観的な記録・管理が必要とされます。

(1) 労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準

(a) 使用者は、労働時間を適正に管理するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、これを記録すること。

(b) 始業・就業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。

・使用者が、自ら現認することにより確認し、記録すること。

・タイムカード、ICカード等の客観的な記録を基礎として確認し、記録すること。

(c) 自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

上記(b)の方法によることなく、自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は、次の措置を講ずること。

  • 自己申告制を導入する前に、その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うなどについて十分な説明を行うこと。
  • 自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施すること
  • 労働者の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定する等措置を講じないこと。また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払い等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

(2) 時間外労働の未払い賃金

時間外労働の未払賃金の有無は、上場審査を行う上で最も注目されるポイントです。賃金の請求権の時効は2年であることから、過去において時間外労働の未払が発生した場合には、最大2年間の遡及払いを課せられる場合があります。

上場準備の過程においては、過去・現在の未払賃金発生の有無を全社的に調査する必要がある。万一、存在する場合には早期精算を行うとともに、将来に向けての改善策の検討が求められます。なお、改正労働基準法の施行により平成22年4月1日より月60時間を超える時間外労働については5割以上(従来は一律2割5分以上)の割増率を適用することとなっています(中小企業は現時点では適用猶予とされている)。

(3) 割増賃金計算における端数処理

前述したように、労働時間は日ごと1分単位で適正に把握する必要がある一方、割増賃金の支払いについては、事務手続きの簡素化を目的として、30分未満の端数の切り捨て処置は「適法ではない」と通達されています(昭和63年3月14日基発第150号通達)。

ここで注意しなければならないのは、簡素化が認められているのは、1か月単位での端数処理であり、1日単位や1週間単位の端数処理を認めたものではない点です。つまり日ごと五分単位で集計した労働時間数の1か月間の合計についてのみ、上記の取り扱いが認められることとなります。また30分以上の端数については1時間に切り上げる必要があります。

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