運転資本とは

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フリー・キャッシュ・フロー(FCF)

=EBIT×(1-実効税率)+減価償却費―資本的支出±運転資本の増減

                          ↑今回はココのお話

運転資本とは、正常な営業活動において必要となる資産及び負債を意味しており、余剰資金を除く流動資産から借入金を除く流動負債を控除した額として定義されます。実務上は運転資本の中でも重要性が高い、増減変動が大きい、売上債権。棚卸資産、仕入債務の各項目で、売上債権と棚卸資産の合計額から仕入債務を控除した金額を運転資本とみなしてフリー・キャッシュ・フローを算定するのが一般的です。当然、これら以外に、事業の特性を考慮して運転資本の増減に重要な影響を与える資産・負債がある場合には考慮しなければなりません。

さて、フリー・キャッシュ・フローの算定に当たり、運転資本の増加分をNOPLATから減産する理由について考えてみましょう。運転資本を増加させる変化、つまり売上債権と棚卸資産が増加し、仕入債務が減少した場合、NOPLATにマイナス調整を行いますが、次のように考えるとわかりやすいでしょう。

営業利益は売上高から営業費用(売上原価や販管費)を控除することで算定され、営業キャッシュ・フローは営業収入から営業支出を控除することで算定されます。営業収入は売上高、営業支出は営業費用にほぼ一致しますが、売上債権の増減、棚卸資産の増減、仕入債務の増減と相違します。企業が投資家から調達した資金は様々な資産に投下され、企業の活動を通じて最終的に現金の形で回収されます。従いまして、現預金を除く流動資産は現金化によって回収される前の資産残高、一方で借入金を除く流動負債は、将来現金として支出される負債の残高であると理解できます。そのため現預金を除く流動資産から借入金を除く流動負債を控除した運転資本がプラスの場合には、将来のキャッシュ・フローの増加、運転資本がマイナスの場合には将来のキャッシュ・フローの減少が見込まれます。

将来のキャッシュ・フローが増加するということは当期において収益が先行(費用が遅れて)して計上されていることであり、将来のキャッシュ・フローが減少するということは、当期において収益が遅れて(費用が先行して)計上されていることを意味しています。例えば売上債権は代金の受領前に売り上げを認識することで発生し、売上債権が発生する場合はキャッシュ・フローに先行して収益が計上されていることになります。

従いまして、各事業年度の利益から将来のキャッシュ・フローの増加額を控除し、将来のキャッシュ・フローの減少を加算することで、収益費用の計上時期とキャッシュ・フローの発生時期との差異が解消され、各年度のキャッシュ・フローが算定されます。つまり、運転資本の増加(減少)は、各事業年度のキャッシュ・フローの減少(増加)になります。

次に売上債権や仕入債務を考えてみましょう。売上債権が増加した場合には、その分だけ売上高が売上収入を上回っています。そのため、会計上の金額である売上高をキャッシュ・フローを基準とした売上収入に修正するためには、売上債権の増加分を営業利益からマイナスする必要があります。同様に仕入債務が減少した場合には、その分だけ仕入支出が仕入高を上回ります。そのため会計上の金額である仕入高をキャッシュ・フローを基準とした仕入支出に修正するためには、仕入債務の減少分を営業利益からマイナスする必要があります。

棚卸資産については、損益計算書では期首の在庫に対して当期の仕入高を加算し、期末の在庫を控除することで投機に売り上げた棚卸資産の原価を算定します。つまり期末の在庫が増加した場合には損益に対してプラスの影響が生じます。しかし在庫の増減はキャッシュ・フローには影響がありません。そのため、営業利益をキャッシュ・フローに一致させるには、在庫の増加による損益へのプラス効果がなかったとして、該当する金額を営業利益から差し引く必要があります。

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