自己株式の取得、保有、処理についてまとめてみましょう。
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続きを読む必要不可欠な安定株主対策
上場企業は乗っ取りを避けるために安定株主対策が必要になります。
- 敵対的買収リスク
上場するということは自社の株式を誰でも市場経由で取得できるようにすることであり、未上場時には起こり得なかった敵対的買収リスクを抱えることになります。5%ルール、TOB制度等の規制により、突然、大株主や親会社が現れるといったリスクは少なくなっていますが、買い占め及びTOBにより買収される懸念が払しょくされません。この対応策としては株主の安定化が有効ですが、上場後に行う場合は制限が多いことから、上場までの間に上場後、できれば上場後のセカンドファイナンスまで見据えた株主構成を構築することが望まれます。
安定株主としては、一般的に、オーナー企業ではオーナー一族、経営陣、金融機関、持ち合い先、取引先等が上げられます。但し友好的で平時では安定株主と考えていた先が、ある時突然態度を変える可能性もあるので注意が必要です。TOBの場合、条件次第では上場企業は自社株主からの株主代表訴訟リスクを経費するため、TOBに応じざるを得ない状況に追い込まれる可能性も念頭に置いておかなければなりません。また、安定株主が業績悪化に伴う資金繰り対策として、株式の売却を余儀なくされるというようなケースも起こり得ます。従って、安定株主の定義、安定化のために目指すべき水準をどのように設定するのか、いつまでその水準を維持するのか、という点を決めておくことが重要です。
- コーポレート・ガバナンス
経営者の立場では、資金調達、知名度と言った上場の果実を得ながら、同時に経営の安定性は毀損したくないと考えるものです。オーナー経営者であれば、一族の持株比率をできるだけ高く維持したい、また、子会社上場の場合には、親会社は子会社を連結の範囲内にとどめようとする等の思惑が働くと思われます。
会社法の定めにより総議決権の3分の2以上を与党株主が占めていれば、経営に必要なほぼすべての議案を可決することができ、2分の1以上確保できれば、経営陣の地位は安泰、よもや乗っ取られるといった事態は避けられます。また、3分の1以上確保できれば、仮に外部株主等から経営の重要事項に係る敵対的な議案が提出された場合でも、これを否決することが可能となります。
議決権と株主総会決議の関係
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普通決議 |
特別決議 |
特殊決議 |
定足数 |
総株主の議決権の過半数に当たる株主の出席 |
同左(定款で3分の1まで引下げ可) |
なし |
成立要件 |
その出席株主の議決権の過半数 |
その出席株主の議決権の3分の2以上 |
議決権を行使できる株主の半数以上、かつ総株主の議決権の3分の2以上 |
主な決議事項 |
計算書類の承認 取締役・監査役の選人 |
定款変更 合併・事業譲渡 新株の有利発行 |
譲渡制限の定款の定め |
上場基準の充足だけを前提にすれば、オーナー一族が75%の株を握ったままでも上場は可能であることから、オーナーが代表取締役で、かつ、上場後も議決権の3分の2以上を保持していれば、会社を自由にコントロールできる状況を維持できることになります。しかしながら、このような状況であった場合、オーナーの独断専行や個人的な利得行為(関連当事者取引や多額の役員報酬)を抑止できずに、結果的に少数株主の利益を毀損する事態が懸念されることから、取引所の審査では、コーポレート・ガバナンスに関連する実質審査基準が設けられています。具体的には、「関連当事者その他の特定の者との間で、取引行為その他の経営欠同を通じて不当に利益又は享受していないこと」「役員の相互の親族関係、その構成、勤務実態又は他の会社等の役職員等との兼職の状況が、公正、忠実かつ十分な業務の執行又は有効な監査の実施を損なう状況でないこと」が定められ、申請会社に対してオーナーによる独善的経営(少数株主に不利益を及ぼす)を防ぐ対策を求めています。
同様に、「親会社等を有している場合、親会社等からの独立性を有する状況にあること」が、実質審査基準に定められており、申請会社が支配株主を有している場合に、少数株主の不利益にならない体制の構築が求められているのです。
上場審査基準の充足
上場時の資本政策により充足する上場基準について、以下見てきましょう。
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