株価評価

DCF法と類似企業比較法の結果が異なる場合

別の評価手法であれば、別の評価結果が出て当然、というのが実務上の現実ではありますが、理論的にはそうではありません。本来、類似企業比較法やDCF法等インカム・アプローチの手法は、全ての前提条件が適切に設定されれば、評価結果は一致するはずです。これらが異なる結果となるのは評価手法が異なるからではなく、前提条件が異なるからです。従いまして、同じ評価手法を用いたとしても、前提条件が異なれば、評価結果も異なります。

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事業価値マルチプルと株主価値マルチプル

企業価値評価を行う場合に、事業価値マルチプルと株主価値マルチプルの二つからのアプローチがあります。結論から申し上げますと、理論的に妥当なのは事業価値マルチプル、実務上容易なのは株主価値マルチプルとなります。その理由について以下で掘り下げてみたいと思います。

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マルチプルの実績値と予想値

株価は企業が生み出す将来のキャッシュ・フローを織り込んで作られると考えられていますので、現在の株価は企業の過去の業績ではなく、将来の業績の予想で成り立っていることが前提となります。このような観点で成り立っていますから、現在の株価と過去の財務数値を対応させるのではなく、現在の株価と将来の予想財務数値を対応させた、予想マルチプルを用いた方が、類似企業比較法においては適しているといえるでしょう。

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マルチプル

類似企業比較法に用いられるマルチプルにはどのようなものがあるか次に見ていきましょう。

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類似企業比較法

類似企業比較法とは、評価対象企業と類似する上場企業の株価の財務数値に対する倍率を算出し、評価対象企業の対応する財務数値に当該倍率を乗じることで株主価値を分析する手法です。ここで倍率をマルチプルといいますが、これは事業価値と財務価値を対応させたもの、株主価値と財務数値を対応させたものの二つに大別させることができます。表にまとめると次の通りです。

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市場株価法

市場株価法とは、市場株価の分析によって株主価値を評価する方法であり、マーケット・アプローチの一つです。証券取引所では多数のプレーヤーが参加して活発に取引を行い、ここで形成された株価は、当事者の合理的な意思や、様々な株価の形成要因が織り込まれていると考えられ、市場の株価は最も高い客観性を有しています。つまり株式市場が効率的と仮定したうえで、評価基準日時点の株価は、全ての情報を織り込み、市場株価は公正価値と一致すると考えるのです。

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平均株価の算出

市場株価法で平均株価を算定する場合、短期的な変動を除外しなければなりません。その一定期間の平均株価を参照する場合、その期間の長短が問題となります。参照期間が短ければ異常な要因の影響で株価がゆがめられ、逆に長い場合には評価基準日と異なる情報に基づいて形成された市場株価が反映されることになり、こちらも株価をゆがめることになります。従いまして、平均株価の算出期間は、短期的な変動を除外し、株価に織り込まれる情報の均一性を確保するために総合的に判断すべきということになります。

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モンテカルロDCF法

モンテカルロDCF法とは、株価や利益水準などの将来のキャッシュ・フローに影響を与える一定のパラメーターの動きを幾何ブラウン運動としてとらえて、コンピューターで発生させた乱数によってパラメーターの動きをシミュレーションした結果に基づいて、将来に発生するキャッシュ・フローの割引現在価値を求め、公正価値を算出する方法です。

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配当還元法

配当還元法は、対象企業株式から将来受ける配当金の見込み額に基づいて株主価値を算定する方法です。従いまして、ベンチャー企業等の非公開会社での株式の譲渡によるキャピタルゲインを期待することが想定されていないため、配当による経済的利益しか期待しない企業の価値算定に用いられます。愚弟的には、以下のように、一定の予想配当を株主資本コストで割ることによって株主価値が算定されます。

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