株価評価

残余利益法

残余利益法とは評価時点における事業用資産の帳簿価額に対し、将来における営業残余利益の割引現在価値の合計額を加えることによって事業価値を算定する手法のことです。ここでの営業残余利益とは、NOPLATから正常な利益(期首事業用資産×WACC)を控除した超過利益のことを言います。

営業残余利益=NOPLAT-事業用資産×WACC(加重平均資本コスト)

投下資産利益率(ROIC:Return On Invested Capital)は次のように示されます。これは税引後営業利益を投下資本で割ることで求められる指標のことです。

ROIC=NOPLAT/事業用資産

そのため、NOPLATは次のように示すことができます。

NOPLAT=事業用資産×ROIC

これらから、営業残余利益は次のように求めることができます。

営業残余利益=期首事業用資産×(ROIC-WACC)

NOPLATとは企業の営業活動からもたらされる事業用資産に対するリターンであり、WACCはその企業に対して投資家が期待する平均的なリターンです。そのため、ROICとWACCの差は企業が投資家の期待を上回って獲得したリターンであり、これに事業用資産の残高をかけたものが営業残余利益となります。

営業残余利益は、当該企業の騎手事業用資産の帳簿価額に対して期待される利益を超えて獲得された利益の割引現在価値という意味で、会計上ののれんに相当します。従いまして、これに評価時点の事業用資産の帳簿価額を合算することで求めた事業価値は、予測が整合的である限りDCF法で算定された事業価値と一致することになります。DCF法においては将来のフリー・キャッシュ・フローの割引現在価値として事業価値を算出し、このようにして求めた事業価値が会計上の事業用資産を超過する場合、当該超過分がのれんとして認識されます。これに対して残余利益法は、正味の事業用資産から期待される利益を超過して得られた営業残余利益が現在価値に割り引かれることでのれんが算定され、これに評価時点の事業用資産を加算することで事業価値が算定されます。両社はのれんを事業価値と事業用資産の帳簿価額の差額として求めるか、営業残余利益の輪いびき現在価値として求めるかの違いはあれど、のれんと事業用資産の帳簿価額を合算して得られる事業価値は理論上一致します。

残余利益法を採用する意義は次の二つです。

(a) 企業の収益性と事業価値の関係を明示的に分析しやすい。

会計上の利益がプラスでも拡張的な投資が続けられる場合、フリー・キャッシュ・フローがマイナスとなる可能性があり、フリー・キャッシュ・フローが企業の収益性に関する指標としては有用でない場合があります。

(b) 事業価値に占める継続価値の割合が小さいため、継続価値に関する見積もりの相違によって算定される事業価値が大きく変動する現象が起きにくい。

DCF法では予測期間のフリー・キャッシュ・フローが資本的支出や運転資本の増加の影響で会計上の利益に比較して小さく算定されますが、継続価値の算定でそのような拡張投資が小さくなり、会計上の利益とフリー・キャッシュ・フローの乖離が小さくなります、その結果事業価値のかなりの部分を継続価値が占めてしまい、成長率のわずかな誤差等で算定結果に重要な影響が生じる可能性があります。

一方企業の超過収益力が次第に低下する傾向を考慮すると、残余利益法では、予測期間狩猟後の残余利益は予測期間終了後の残余利益は予測期間のそれに比して低くなるのが通常であり、企業価値に占める継続価値の割合が小さくなります。

APV法

APV法(Adjusted Present Value Method)とは、将来のフリー・キャッシュ・フローの期待値を企業が負債を利用していないと仮定した場合の株主資本コストで割り引くことによって、無負債事業価値を算定し、これに負債の節税効果の現在価値を加算することで事業価値を算定する方法です。

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収益還元法

収益還元法とは、会計上の利益を一定の割引率で割り引くことで事業価値を評価する方法です。DCF法が将来にわたるフリー・キャッシュ・フローを割り引くことによって事業価値を計算する方式であるのに対して、収益還元法は一定の利益が永続し、純利益をキャッシュ・フローであることとして、事業価値を評価する簡便な評価方式です。

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退職給付債務の評価法

退職給付債務は決済されるまでの期間が長期にわたる長期債務であることで、現在価値に割り引かれるため退職給付費用に利息費用が含まれていること、一定の仮定に基づいた見積もり計算による債務であることに特徴があります。

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退職給付債務の基礎~用語解説~

上場を目指している会社であれば絶対に避けては通れないのが退職給付債務の考え方です。これは従業員の将来を含む総勤務期間に対応する退職金支給総額のうち、現時点までの勤務期間に対応する部分の割引現在価値を意味しています。

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新株予約権の希薄化

新株予約権が行使されると、企業は時価を下回る価額で株式を交付しなければなりません。新株を交付する場合、時価発行増資をしていたら得られた調達額よりも低い額でしか調達できないために、時価と行使価格の差額が企業の機会費用となります。

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新株予約権の評価の仕方

評価対象企業が新株予約権付社債を発行している場合は、有利子負債等と同じく、その時価を企業価値から控除します。ここで新株予約権付社債の時価を評価する方法としては、新株予約権部分と社債部分を区分して評価する方法と一括して評価する方法があります。

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控除する有利子負債等の範囲

企業が生み出す全てのキャッシュ・フローの合計である事業価値に非事業資産を加算した企業価値は、全ての資本提供者に分配され、企業価値から有利子負債等の普通株主に帰属しない部分の時価を控除することで算定されますが、控除するものは次のようなものになります。

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非事業資産

事業価値に対して、事業に関係がなく、それを処分しても問題はない資産の価値を非事業資産として加算し、その合計を企業価値とします。事業価値は企業の営業活動から生じる将来のフリー・キャッシュ・フローの割引現在価値ですが、非事業資産は企業の営業活動に利用されていないため、買い手がその後で処分できます。そのため非事業資産は時価で表します。

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バリュードライバー法

バリュードライバー法は、企業がNOPLATの一定割合を再投資し、それがNOPLATを一定の割合で成長させるという前提に基づき、永久成長率法に修正を加えた算定方法を言います。以下の算式によって継続価値を見積もります。

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